研究課題/領域番号 |
22H00249
|
研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
水津 光司 千葉工業大学, 工学部, 教授 (20342800)
|
研究分担者 |
石原 沙織 千葉工業大学, 創造工学部, 准教授 (00589046)
長 敬三 千葉工業大学, 工学部, 教授 (00633356)
内海 秀幸 千葉工業大学, 創造工学部, 教授 (10316804)
中林 寛暁 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (20296320)
枚田 明彦 千葉工業大学, 工学部, 教授 (40500674)
陶 良 千葉工業大学, 工学部, 教授 (60327161)
佐藤 宣夫 千葉工業大学, 工学部, 教授 (70397602)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
キーワード | テラヘルツ波 / 非破壊検査 / 周波数シフト帰還型レーザー |
研究実績の概要 |
A:FSFレーザーを構築し、パルス種光注入の有無、共振器内への帯域透過フィルタ挿入の影響を調査した。種光波長、帯域透過フィルタ線幅および中心波長によるビート周波数SN比への影響を検証した(水津)。線幅が約100GHzであるFSFレーザー光に対し帯域可変光フィルタによって線幅を狭窄化し、CWレーザー光と合波したのち、UTC-PDによってFSミリ波の発生を試みた(水津)。 B:圧縮センシング処理の正則化項に振幅情報を保持するFISTAを適用することで、MUSICと同等以上の推定精度で振幅も推定できることを確認した(長)。相関合成法における適切な相関次数と間隔選定において、分散の有効性を見出した。時間反転併用型感度補正信号の位相項を考慮し、測位精度向上の有効性を確認した(陶)。FDTD法とレイトレーシング法を融合させたシミュレーションや実測により、POLSAR法の推定法確立を検討した。層構造や不規則形状において高精度推定を可能とする手法の確立に向け、補正法に関する検討を行った(中林)。紙で覆われたコンクリート表面のサブミリ幅の亀裂の検知に向けて、60-90GHzのスペクトル信号を使用したミリ波像取得において、コントラストを最大化するアンテナ高、周波数を同定した(枚田)。 C:コンクリートからの反射テラヘルツ波に対し、偏光の影響、入射角の影響を検証した。加圧状態における反射テラヘルツ波の状態変化を実測した(水津・内海)。コンクリート含水量と位置特定のために、試験片にテラヘルツ光を照射できるヘッド機構を設計・開発した(佐藤、内海)。ウレタンゴム系塗膜防水層の接着不良部を再現した試験体において、密着工法と通気緩衝工法共に、テラヘルツ波により接着不良部が検出できることを確認した(石原)。膜厚不均一性の問題に対しPOLSAR法を用いた欠陥検出の有効性に関する検討を実施した(中林)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A:パルス種光注入、種光波長や帯域透過フィルタの設定により、ビート周波数SN比の向上が実証された。最大で33dBのSN比が得られ、従来型FSFレーザーでの17dBを大きく上回るSN比が達成された(水津)。帯域可変フィルタの線幅に対するFSミリ波の出力の影響を調査し、FSFレーザー線幅50GHz程度まで出力低下を起こさずに線幅の狭窄化が可能であることが判明した。(水津)。 B:圧縮センシング検討に加え、THz-TDS信号の広帯域性を利用した3周波数によるMUSIC推定で、アレー素子数を削減しながら推定精度を約25%改善できることを示した(長)。映像最大値や一次ノルムより、映像分散と映像品質の顕著な相関が得られた。位相考慮により、受信エネルギーの0.4dB増加、測定精度3%以上の改善が見られた(陶)。二層構造の各層での不規則欠陥を精密推定することを目的とし、POLSAR法の補正法の拡張を行った。二層構造においても推定が可能であることを確認した(中林)。60-90GHzのスペクトル信号を使用した非破壊ミリ波像取得において、アンテナ高0.6mm、周波数73.275GHzの設定で、23dB以上のミリ波画像コントラストが得られた(枚田)。 C:コンクリートからの反射テラヘルツ波は、s、p偏光において波形が変化すること、ブリュースター角付近では両者の差が顕著な事が分かった。加圧による反射波状態変化が確認された(水津・内海)。テラヘルツ光照射可能な走査型プローブ顕微鏡用ヘッド機構を設計・製作し、焦電体への光照射によるエネルギー散逸量の基礎データを収集した(佐藤、内海)。ウレタンゴム系塗膜防水材の塗布の欠陥を検出するためのPOLSAR法を用いた実験により、密着工法と通気工法による防水材に対し、偏波状態の変化を観測することで、防水材剥離などの欠陥を検出できる可能性を見出した(石原、中林)。
|
今後の研究の推進方策 |
A:バラックでのパルス光注入FSFレーザー実験系構築を行っていることから、外部温度の変動により動作状態が変化する。FSFレーザー共振器を温調ボックス内にて構築し、長時間の安定したFSFレーザー発振を実現する(水津)。FSFレーザー光およびCWレーザー光の最適な入力バランスの調査、低周波数化における最大出力が得られる中心周波数の特定など、FSミリ波の出力向上に取り組む(水津)。 B:圧縮センシングによるMUSIC処理に比べ更なるアレー素子数の削減・測定時間短縮について検討する。時間反転処理による受信アンテナから直接見通せないターゲットの推定実現を目指す(長)。時間領域信号を用いたFISTA映像化方法の検討を実施する(陶)。層構造材料に対し、POLSAR法の有効性や補正法の継続的な検討を実施する。複雑な形状推定において本手法の有効性を検証し、補正法の継続的な拡張を実施する(中林)。ミリ波像の分解能に向けて、アンテナ先端での電界を集中させることが可能なアンテナの設計、試作を行う(枚田)。 C:コンクリートからの反射テラヘルツ波の解析により、コンクリ―トの状態検査が可能であるパラメータを模索していく。特にパルス遅延情報から状態検査を実施できる可能性が高い(水津・内海)。セメント材に鉄・マンガンを加え、水分含有量に対応するエネルギー散逸量から水硬性能に関する新たな知見の取得を目指す(佐藤、内海)。塩化ビニル樹脂シート防水やゴムシート防水の接着接合部について、テラヘルツ波による接着不良の検出が可能か検証する(石原)。様々な工法によるウレタンゴム系防水材の塗布の欠陥検出について継続的な検討を実施する。偏波による欠陥検出のメカニズムをシミュレーションにより解明し、欠陥が受信偏波状態にもたらす作用について定性的に明らかにすることにより検出精度の向上を目指す(中林)。
|