研究課題
熱の伝わり方を電気スイッチで切り替える全固体電気化学熱トランジスタを世界で初めて実現した。半導体トランジスタが電圧で半導体中を流れる電流を制御するように、熱のトランジスタは電気的に材料の熱伝導率を制御するデバイスである。2014年に最初の電気化学熱トランジスタが報告されて以来、いくつかの電気化学熱トランジスタが提案されたが、いずれも液体(電解液やイオン液体)を用いることから、液漏れの点で実用化には明らかに不適であった。本研究では、液体を一切使用しない全固体電気化学熱トランジスタを開発するため、結晶構造を維持したまま酸素含有率が変えられるコバルト酸ストロンチウム(SrCoOx)薄膜と、酸化物イオン伝導性固体電解質を組合せた。電気化学的酸化・還元を行った結果、オン時の高い熱伝導率~3.8 W/m Kとオフ時の低い熱伝導率~0.95 W/m K(オン/オフ熱伝導率比4)を繰り返し切替えることに成功した。このオン/オフ比は電解液やイオン液体などの「液体」を用いた熱トランジスタと比較してそん色ない値である。将来的には電気制御できる熱のシャッターなどの熱制御デバイスとしての応用が期待される。
1: 当初の計画以上に進展している
世界初となる全固体電気化学熱トランジスタを実現し、2023年2月21日にAdvanced Functional Materials誌にオンライン掲載された。また、同時に北海道大学からプレスリリース(和文・英文)され、日刊工業新聞、日経新聞関係のネットニュース、Yahooニュースを含む、国内外で50近いメディアで報道された。
2022年度に世界初となるSrCoOx薄膜を活性層とする全固体熱トランジスタを実現し、論文発表(Advanced Functional Materials)した。同時にプレスリリースも行い、国内外からの注目を集めた。現在までの研究は極めて順調である。申請書に記載した計画通り、2023年度は、全固体熱トランジスタの高性能化を目指した研究を行う。具体的には、①活性層を別の遷移金属酸化物で置き換えて熱伝導率のオン/オフ比の向上を狙う、②固体電解質として使用するYSZ単結晶板の厚さを薄くすることで動作電圧の低減・高速化を行う。
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (36件) (うち国際学会 17件、 招待講演 2件) 備考 (3件)
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https://www.hokudai.ac.jp/news/2023/02/post-1188.html
https://www.global.hokudai.ac.jp/blog/solid-state-thermal-transistor-demonstrated/
https://functfilm.es.hokudai.ac.jp/