研究課題/領域番号 |
22H00260
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
本間 剛 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (70447647)
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研究分担者 |
大幸 裕介 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70514404)
篠崎 健二 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (10723489)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 全固体電池 / ナトリウムイオン電池 / ガラス / 結晶化 / イオン伝導体 / レーザープロセス / 結晶成長 / セラミックス |
研究実績の概要 |
我々が提案するナトリウム系酸化物系全固体電池は、ガラスが示す軟化流動と結晶化を積極的に活用し、全固体電池の開発で重要となる異種材料間の界面形成に優位である。本研究では全固体電池の開発に資する新材料創生とレーザープロセスによる革新的な界面形成プロセスの確立を推進する。本年度は1)ナトリウム系全固体電池のレーザープロセスによる正極活物質の非晶質化と溶融池からの結晶成長、2)スズケイ酸系新規負極活物質の創生、そして、3)レーザープロセスによるビスマス系ガラス負極の局所溶融と結晶化機構の解明を推進したところ以下の成果を得た。 鉄イオンは原子価状態によって種々の波長に大きな光吸収を持つ。つまり光吸収と多フォノン緩和を活用することで局所的な加熱を達成できる。そこで、正極活物質であるNa2FeP2O7、NaFePO4および、NaFeO2へのレーザー照射と形態変化を評価した。Na2FeP2O7とNaFePO4への照射では溶融池の急冷によって緻密なガラス膜が得られることが分かった。NaFePO4は一般的な溶融法では作製困難であることが分かっており、熱容量の小さい領域の局所溶融によって新たな組成でのガラス作製の可能性を見出した。また、NaFeO2へのレーザーでは溶融池からのNaFeO2の結晶成長を確認した。スズケイ酸系の負極結晶化ガラスの熱処理でスズとFeSn2のナノ粒子が高濃度に分散した複合セラミックスの合成を合成し、粒子サイズと析出結晶の分率と充放電特性との相関を明らかにした。ビスマスケイ酸塩ガラスの熱処理でも同様に微細なビスマスナノ粒子が分散した結晶化ガラスを合成し、負極活物質としての機能性を明らかにした。さらにレーザー光の吸収イオンとして銅イオンを添加したガラスの作製とレーザーによる局所溶融を確認し、正極のみならず負極活物質においてもレーザープロセスを適用できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように本年度は特に新材料の創出とレーザープロセスの有用性を実証することができた。レーザープロセスは単なる界面成型のための加工技術にとどまらず、溶融池の小さな熱容量が相乗して、新たな組成でのガラス作製を可能にした。ガラス状態は熱力学的に非平衡で、3次元的なイオン伝導が期待できることから、新規な材料探索にも役立つことを着想した。得られるガラス膜は緻密であることと、固体電解質と一体化した状態で形成できることから、新材料のイオン伝導性の評価には好適な材料および形状と言える。以上のことから当初の計画通り遂行できており、予測できていなかった新たな発見もあった。新たな着想にもとづいて、新材料を評価するために、次年度に向けて新たなレーザー照射と評価のシステム構築を進めている。また研究分担者である、大幸氏および篠崎氏の協力によって、固体NMRやX線微細構造解析により作製した材料の高度な解析を進めることができた。これらの研究成果を加えて、共著での学会発表や学術論文として発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り、本年度は多くの有意義な研究成果と着想を得た。研究室の体制は限られていることから、次年度は本年度の研究成果で得た新たな着想を加えて、優先度をつけながら研究計画を進めていく予定にしている。特にレーザープロセスによる新規組成でのガラス作製では、よりアルカリイオンを高濃度に含有する酸化物でもガラス化可能となったことから、現在構築中の材料合成および評価のための研究環境の完成に合わせて、実施する予定にしている。分担者との連携も確立できており、双方の大学院生が実験する機会も増えつつある。次年度はこれらの連携の強化も図り、酸化物系全固体電池の分野をリードしていきたい。
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