研究課題/領域番号 |
22H00277
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
町田 正人 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (70211563)
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研究分担者 |
芳田 嘉志 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 助教 (40722426)
大山 順也 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (50611597)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 薄膜 / 触媒 / 多元素化 / ターンオーバー |
研究実績の概要 |
本研究では2成分系以上の金属元素を複合した未踏の物質探査空間を対象とし、高ターンオーバー頻度(TOF)の触媒反応を可能にする多元素薄膜触媒の開発および電子構造との相関の解明に取り組んでいる。初年度の実績を以下に記す。 1)多元素薄膜触媒の調製とキャラクタリゼーション 2成分系以上の金属元素を複合した薄膜をパルスアークプラズマ(AP)法で調製した。得られた複合膜の結晶構造、微細構造、電子構造および吸着特性をX線回折、電子顕微鏡、光電子分光法などで解析した。耐熱性金属箔(Fe-Cr-Al系合金、厚さ数10μm)の表面に2元AP銃を用いて複合金属薄膜を製膜した。金属種のプラズマは約0.2 msのパルス状に発生するため、複数のAP銃の放電を正確に同期することによって、PdPtをはじめとする均一組成の合金薄膜を調製した。さらに複合金属ターゲットを組み合わせて用いることでPtFeNiなどの多元素薄膜を得た。Rh薄膜の表面にCeを修飾した積層型薄膜も調製した。得られた薄膜の組成、構造、配向性、電子状態を評価した。 2)高TOF反応の探索と解析 触媒反応試験の自動化およびハイスループット化により、大量の活性データを収集し、薄膜触媒の最適組成を突き止めるとともに、粉体触媒に比べて桁違いに高いTOFを発現する薄膜触媒・反応系を絞り込んだ。金属箔触媒を3 mm×30 mmの短冊状に切断した試料について、一酸化炭素酸化、窒素酸化物還元、アンモニア酸化、亜酸化窒素分解などのモデル反応に対する活性評価を行った。反応探索の結果、薄膜触媒特有の高活性が認められる系として、NH3-O2、CO-NO、C3H6-O2反応を見出した。速度解析を行ってTOF、反応速度定数、活性化エネルギー、反応次数などのデータを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度はまず始めに2成分系以上の金属元素を複合した多元素薄膜触媒の調製を検討した。2成分系(PdPt、FeNiなど)、3成分系(PtFeNi、PdPtCuなど)、4成分系(PtPdFeCuなど)について調製に成功しており、多元素化戦略が順調に進んでいる。また、これら複合薄膜の構造について合金、分相、表面修飾、積層などの多様性が可能になりつつある。通常では合金化が困難なFeCuの合金薄膜が得られるなど、アークプラズマ法の特徴が活かされることを実証した。表面修飾型ではCe修飾Rh薄膜の調製に成功した。得られた薄膜のキャラクタリゼーションも順調に進んでいる。高ターンオーバー反応系の探索については、NH3-O2、CO-NO反応のほかに、NO-H2、C3H8-O2反応などを見出した。Ce修飾Rh薄膜では三元触媒の特性向上に欠かせない酸素吸蔵能の発現に成功した。以上のように本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画通り、2年度は1)多元素薄膜触媒の調製とキャラクタリゼーション、および2)高TOF反応の探索と解析 を中心に引き続き取り組む。1)では2成分系以上の金属元素を複合した薄膜をパルスアークプラズマ(AP)法で調製する。得られた複合膜の結晶構造、微細構造、電子構造および吸着特性をX線回折、電子顕微鏡、光電子分光法などで解析する。多元素化による構造・状態変化を実験的手法と電子構造計算によって検討する。また、触媒活性を含めて得られた結果をもとに機械学習モデルを利用したデータ解析に必要となる記述子を検討する。さらに反応雰囲気および熱処理における構造や状態変化に着目して、熱的に安定な薄膜触媒設計の指針を得る。
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