研究課題/領域番号 |
22H00293
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
平原 徹 東京工業大学, 理学院, 教授 (30451818)
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研究分担者 |
秋山 了太 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (40633962)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 物性実験 / 原子層物質 / 磁性トポロジカル絶縁体ヘテロ構造 |
研究実績の概要 |
まず、磁性元素としてVを用いた、磁性トポロジカル絶縁体ヘテロ構造の形成を目指し、これまで用いてきたMnと同様な方法で試料の作製を行った。具体的にはまずBi2Se3薄膜を形成し、その上にVとSeを共蒸着することでVがBi2Se3の最表面層に取り込まれることで、VBi2Se4/Bi2Se3を目指したが、まず蒸着中の電子回折パターンにおいて、Bi2Se3由来ではないものが出現した。そして角度分解光電子分光でバンド構造を測定した結果、VとSeの蒸着時間を増やすとBi2Se3の表面ディラックコーンの強度が弱くなった。これはVBi2Se4/Bi2Se3ではなく、VSe2/Bi2Se3というヘテロ構造が形成されたことを示唆しており、事実、測定されたバンド構造はVSe2のバンド構造と非常によく似ていた。理論計算ではVSeがBi2Se3の表面に堆積するよりも内部に潜り込んでVBi2Se4を形成する方がエネルギー的に安定であると示されていたが、この計算ではVSe2の形成が考慮されておらず、実際の実験条件とは違っていた。現状はSeとVの流束比が5:1で蒸着しているので、今後はこれを1:1に近づけることでVBi2Se4/Bi2Se3のヘテロ構造の作製を目指す。
また、Mn(Bi,Sb)2Te4/(Bi,Sb)2Te3/Mn(Bi,Sb)2Te4のサンドイッチ構造について、面間・面直方向の強磁性相互作用を明らかにするため、スペーサーの(Bi,Sb)2Te3の厚みやSb濃度を変化させて、その強磁性特性を磁化測定や異常ホール効果で評価した。またキャリア密度をゲート電圧を印加して変化させ、キャリア密度依存性も確認した。その結果、面内はBloembergen-Rowland相互作用が優勢で、面間相互作用はそれに加えて強磁性層のカップリングがあるものと明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の主目的である、新しい磁性トポロジカル絶縁体ヘテロ構造の作製にはまだ成功していないが、その実現に向けて重要な知見が得られた。また系統的な磁化測定により、二番目の目的である複数の磁性層間の相互作用の解明に関しては重要な知見が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、VとSeを共蒸着する際の流束比に注意することでVBi2Se4/Bi2Se3の作製を目指し、類似のVBi2Te4/Bi2Te3の作製につなげる。また複数の磁性層間の相互作用に関しては、X線内殻円磁気二色性(XMCD)測定により、元素選択的にミクロスコピックな磁化を評価することで解明を目指す。さらにin situで磁化特性を評価できるように既存の装置を改良して、in situでの異常ホール効果の世界初の測定を目指す。
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