研究課題/領域番号 |
22H00297
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
寺田 典樹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究センター, 主席研究員 (60442993)
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研究分担者 |
齋藤 明子 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究センター, 主席研究員 (20426612)
間宮 広明 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究センター, 主席研究員 (30354351)
小林 悟 岩手大学, 理工学部, 教授 (30396410)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 磁気熱量効果 / 熱スイッチ |
研究実績の概要 |
極低温磁気冷凍技術において、低温領域で初めて発現する量子物性現象を積極的に用いることによって、これまでに無い動作原理を利用した全固体冷却法による 極低温度動作ヒートポンプの研究開発を行い、極低温度における冷却技術の技術革新を起こすものである。全固体冷却法は、(1)磁気冷凍材料(弱磁場高応答 性磁性体)、(2)熱スイッチ(純金属多結晶固体熱スイッチ)、(3)蓄冷材(巨大磁気比熱蓄冷物質)の3つの要素によって構成されている。全体期間5年 の間に、それぞれの要素に対して特性を最大化し、それらを統合した冷却システムを開発する計画である。本年度は磁気冷凍材料に関して、候補物質であるHoB2, ErCo2-系材料、Gd金属間化合物に関して、巨大な磁気熱量効果発現の起源を解明する目的で、断熱温度変化測定、比熱測定、および放射光X線回折実験、中性子回折実験を行った。特に、Gd金属間化合物に関しては、中性子回折実験等によって、長周期の反強磁性磁気構造を解明した。これまで、主に強磁性体のみが磁気冷凍材料の候補物質であった。GdCo2B2は反強磁性体でありながら、磁場に対する高度な応答性を示すことが知られていた。しかしながら、Gdが中性子吸収体であるため磁気構造決定に不可欠な中性子回折実験が行われていなかった。本年度我々は、J-PARCのHRCという中性子装置を用いて高エネルギーの中性子を利用することにいよってGdの大きな吸収を抑制して実験することで、磁気構造を決定することができた。その磁気構造は、極めて長周期(50オングストローム程度)の磁気構造で、そのため磁場印加の際の高い応答性が発揮られ、大きな磁気熱用効果が発現することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目である本年度は、新たに高速磁場変化による全固体冷却システムの試験装置の改良、自動化を行い、磁気冷凍材料の巨大磁気熱量効果の起源の解明に向けて順調に研究が進行している。おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に研究課題の研究費により高速磁場変化機構を備えた全固体冷却法の冷却試験機を導入し、2023年度にそれを改良、自動化した。2024年度は2023年度に改良された高速磁場変化機構を備えた全固体冷却法の冷却試験機を用いて、磁気冷凍材料、熱スイッチ、蓄冷材料を組み込んだシステムの試験に着手する予定である。それにより、平行して行なっていく予定の磁気冷凍材料、熱スイッチ、蓄冷材の候補物質の選定や最適化、性能の 最大化と合わせて、本研究の目的である全固体冷却法の基盤技術の開発を推進する予定である。
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