研究課題/領域番号 |
22H00310
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
三木 一 九州大学, 工学研究院, 准教授 (10706386)
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研究分担者 |
笹木 圭子 九州大学, 工学研究院, 教授 (30311525)
Suyantara Gde・Pandhe・Wisnu 九州大学, 工学研究院, 特任助教 (70932367)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 浮遊選別 / 含ヒ素銅鉱物 / 輝水鉛鉱 / ピロ亜硫酸ナトリウム / 分離機構 / 疎水化 / 過酸化水素水 / 親水性沈殿 |
研究実績の概要 |
ヒ素やモリブデンなどの銅精鉱からの浮遊選別による除去は大きな課題とされてきたが、 研究代表者のグループにより、安全で安価な酸化還元剤(過酸化水素水、ピロ亜硫酸ナトリウム)の添加が効果的であるとの報告がされてきた。これらの方法をより実操業に近い条件で適用するため、様々な鉱物や表面性状の試料を用いて検討した。含ヒ素銅精鉱からの浮遊選別によるヒ素の分離について検討するため、代表的な銅鉱物黄銅鉱だけではなく、斑銅鉱、輝銅鉱を用いての実験を行い、また、添加する酸化還元剤としてピロ亜硫酸ナトリウムを加えた系について、より効率的な方法について検討を行った。その結果、ピロ亜硫酸ナトリウムを添加し、pHを適切に調整することにより、これまで分離が可能とされてきた黄銅鉱と硫ヒ銅鉱だけではなく、輝銅鉱と硫ヒ銅鉱の分離浮選を行うことができた。表面分析及び溶液分析の結果により、捕収剤が硫ヒ銅鉱表面に選択的に付着するためであることを明らかにした。 また、モリブデンと銅の分離浮選のために、ピロ亜硫酸ナトリウムに加えて、銅の捕収剤として知られているチオノカーバメート系、メルカプタン系の捕収剤を添加することにより検討を行った。その結果、チオノカーバメート系、メルカプタン系の捕収剤を添加した時にピロ亜硫酸ナトリウムを添加すると、これまでより銅モリブデン分離効率が上昇した。表面分析及び溶液分析を行うことにより、このことは、銅鉱物表面から選択的に捕収剤が離脱するためであることを見出した。これらのように、銅鉱物とヒ素鉱物の分離、銅鉱物とモリブデン鉱物の分離をより高い効率で行い、また各種表面分析法により簡便なモデルで説明してきた。含モリブデン銅精鉱においても検討を行い、高い効率で銅モリブデンの分離ができることを確認した。これらの結果は、各種国内学会および国際学会において発表し、高い評価を受け、また論文発表も行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、銅鉱物と含ヒ素銅鉱物、銅鉱物とモリブデン鉱物の分離については、黄銅鉱と硫ヒ銅鉱、黄銅鉱と輝水鉛鉱について主に検討を行ってきたが、当該期間においては、銅鉱物として黄銅鉱だけではなく輝銅鉱、斑銅鉱について、含ヒ素銅鉱物として硫ヒ銅鉱だけではなくヒ四面銅鉱について検討を行った。これらの鉱物は黄銅鉱と比較して酸化されやすいことなどから結果を得るのが難しかったが、ピロ亜硫酸ナトリウムの添加と各種条件設定により、高い効率で分離を行うことができた。また、これらのメカニズムについてXPS表面分析、AFM表面性状分析、FTIR分析、吸光高度計、電気化学測定装置などを用いて検討し、銅捕収剤の含ヒ素銅鉱物への速やかな吸着による疎水化と、ピロ亜硫酸ナトリウムによる銅鉱物表面からの銅捕収剤の脱離、銅鉱物表面への親水性沈殿の生成などにより詳しく説明できた。 また、これらの方法をより実操業に近い条件で検討を行うため、各種含ヒ素および含モリブデン銅精鉱、鉱石を入手し、回分式の浮選機などにより検討を行った。含モリブデン銅精鉱を用いた実験においては、従来のピロ亜硫酸ナトリウムだけではなく類似した化合物においても分離浮選に寄与することを確認し、多段浮選についても検討できた。また、鉱石および精鉱のスラリー作成のための攪拌槽と連続式の浮遊選別機を購入し、セットアップを行った。大量の試料を消費することから、まずは水を用いた検討、不必要な試料を用いた予備実験の結果、適切に条件を設定することにより安定した運転条件が得られることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
これまで検討してこなかった鉱物についても同様に検討を行う予定である。特に、黄鉄鉱については除去が重要な課題であることから、これについても多段浮選の初期の段階で除去が行えるように検討する。これまで検討してこなかった鉱物としては、その他方鉛鉱、閃亜鉛鉱、各種粘土鉱物など、難処理複雑硫化銅精鉱についても適用できるように、高純度鉱物を用いた浮遊選別実験を行い、またこれらの浮選挙動については、XPS表面分析、AFM表面性状分析、FTIR表面分析、電気化学測定により、挙動の解析を行い、より適切な分離を行えるよう検討を行っていく予定である。 これら各種難処理複雑硫化銅鉱石、精鉱近く入手予定であるため、高純度鉱物で検討した分離条件での浮遊選別を、精鉱や鉱石においても検討を行う。これまで検討を行ってきた、過酸化水素水、ピロ亜硫酸ナトリウムに加えて、これらの効果を大きくする結果が得られてきた各種銅捕収剤などの添加により、各段での選択浮遊選別をより効率的に行う。また、昨年度購入した連続式浮遊選別機について、適切な条件での浮遊選別を連続で行うため、格段のポンプでの接続、ポンプ速度や浮選条件調整の適切な制御を行えるよう、制御ソフトLabViewを用いた検討を行う。
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