研究課題/領域番号 |
22H00314
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
関 修平 京都大学, 工学研究科, 教授 (30273709)
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研究分担者 |
田中 隆行 京都大学, 工学研究科, 准教授 (20705446)
筒井 祐介 京都大学, 工学研究科, 助教 (50845592)
須田 理行 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80585159)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | Wallach Rule / TRMC / Circularly Dichroism / TRTDS / Conductivity / Mobility / 凝縮相 / 電荷分離 |
研究実績の概要 |
本研究“Anti-Wallach則への挑戦:分子の対称性と電子物性の特異点を探る”では,分子性固体(凝縮相)における電子状態密度の制御を特に分子対称性が破れた分子群において行うことを目的にしている.キラル分子系の物質密度の低下を経験的に示したWallach Ruleに対し,1~2.x次元の低次元系材料では例外的に電子状態密度は上昇する可能性がある,という予備的な評価結果をもとに,2022年度は,円偏光励起パルスを用いた選択的光キャリア注入に基づく電子輸送評価法:Circularly Polarized Light-induced Time-Resolved Dielectric Loss Spectroscopy法の確立を進めてきた.物質の対称性評価のための円偏光二色性に関する定量評価を行うための装置を整備したが,鍵となる二色性分光計の納入に遅延・不具合があり,繰越を行った.CD-TRDLS装置の基本概念実証は順調に進捗し,大きな二色比を示すCarbon Nanotubeを対象として左右円偏光励起下において,同じく対称性の破れたPerylene Diimide(PDI)分子との間の光誘起電子伝導信号の微分測定に成功し,異なる対称性の物質系における励起光二色性の電子物性による検出に成功した.この微分伝導度における励起波長依存性について,電荷分離初期過程の実験的な計測と定量を次のステップとして直接分光法を用いて進めることとした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最重要課題であるCPL-TRDLS法の実験的実証順調に進捗し,円偏光励起による微分伝導度信号の実験的な定量に成功している.特に,研究開始時に問題であった円偏光吸収断面積二色性比の大きさと,電荷分離による電荷注入下での伝導度信号の大きさの協奏する物質系として,キラルCarbon Nanotubeが東京都立大学・柳博士との共同研究によりもたらされたことが極めて有効に作用した.キラルCNTと電子捕捉剤であるPDI分子の表面会合状態に,選択的な相互作用が存在する可能性があり,これを実験的に検証するために,本研究で導入したCircularly Dichroic Spectrophotometer(円偏光二色計:CD装置)が不可欠であるが,2022年度に納入がなされたものの,まだ定量的な計測には至っていない.この点が,本研究の実施を一部継続とした最大の理由である.
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今後の研究の推進方策 |
本年度導入したCD装置は,製造メーカー:日本分光の対処を強く依頼している.本装置は,研究概要に記載の通り,円偏光励起における励起状態分布の計測のために必須であり,また,キラルCNTが示す近赤外領域における吸収断面積の円偏光依存性のために極めて重要な役割を果たすことが期待されている.一方でこの領域の円偏光二色比の計測が可能な装置は,国内にはほとんど例が無く,これまで日本国内に1台のみ,占有装置として導入されていると聞いている..海外メーカー製の同等装置の納入状況を精査し,また初期吸収断面積の二色比計測において必須となる可視~近紫外領域における計測が可能な代替装置の貸与を強く求め,研究の推進に努力する.
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