研究実績の概要 |
分子・原子レベルで物性を制御し、生命科学・物質科学に資する『化学』の最も大切な概念は、「結合」である。なぜなら、分子は構成する「 結合」の特性により、特有の幾何(立体)構造と電子構造が生じ、機能や物性が現れるからである。有機化学における結合としては、古くより「 共有結合」と「イオン結合」が有名であるが、本研究では、1990年代に提唱されはじめた<電荷シフト結合>に着目し、その合成法や活性化法・ 利用法を開発し、この『準安定結合』に関する構造化学・物理化学・理論化学・合成化学を展開したい。具体的には、「プロペラン」「二原子炭素(C2)」「かご型分子・クラスター分子」「ナノカーボン」の合成化学に革新をもたらし、<電荷シフト結合>の本質を探る基礎学理と物質科学・生命科学に新たな三次元立体電子空間を提供するための有機化学・合成化学・理論化学を創出することを目指し研究を行っている。本年度は、「『C2 の常温・常圧化学合成』の基盤として、様々な前駆体のデザインと合成(成果の一部を Phys. Chem. Chem. Phys., 2022, 24, 25816 に報告)」「『新たなケミカルスペースを切り拓く』三次元ビシクロ化合物として、籠型アルカンの一種であるビシクロヘプタン(BCH)の化学に取り組んだ。独自に見出したジヨード BCH を原料として[3.1.1]プロペランを発生させる反応(成果の一部を J. Am. Chem. Soc. 2022, 144, 21848. に報告)」を開発した。
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