研究課題/領域番号 |
22H00344
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
大西 洋 神戸大学, 理学研究科, 教授 (20213803)
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研究分担者 |
浦谷 浩輝 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (50897296)
長坂 将成 分子科学研究所, 光分子科学研究領域, 助教 (90455212)
小堀 康博 神戸大学, 分子フォトサイエンス研究センター, 教授 (00282038)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 反応速度論 / オペランド計測 / 電子励起状態 / ペロブスカイト構造 / 多電子反応 / マイクロ電極 / 赤外吸収分光 / エックス線吸収分光 |
研究実績の概要 |
水から電子を取り出す半導体光触媒が半世紀にわたる材料探索のなかでいくつも見いだされてきた。これらを改良して社会実装しようとする開発研究が世界中でおこなわれている。その一方で、光触媒のサイエンスを探究する基礎研究は古くから知られた光触媒材料に集中しており、ここに生じた材料ギャップ(material gap)を埋めようとする研究は少ない。本研究では、最近開発された世界最高レベルの量子収率で水を水素と酸素に完全分解する二つの半導体光触媒(チタン酸ストロンチウムとタンタル酸ナトリウム)がミリ秒の時間をかけて水を酸素と水素に分解する物質変換メカニズムを比較して、光触媒による人工光合成反応のサイエンスを探究する。 (1)半導体光触媒が水中に放出する溶存酸素(O2)をマイクロ電極を使って従来比1000倍の速度で検出する独自の計測法を使ってチタン酸ストロンチウム光触媒とタンタル酸ナトリウム光触媒の酸素生成反応を比較した。タンタル酸ナトリウム光触媒に紫外励起光を照射すると、光触媒反応によって酸素が水中に放出されるのではなく、光触媒近傍の溶存酸素が減少する予想外の現象を見いだした。 (2)分子科学研究所の放射光施設(UVSOR)において、光触媒の電子励起状態を軟エックス線吸収分光によって計測評価した。神戸大学に整備した赤外-近赤外-可視光の吸収を測定するATR分光装置とあわせて、赤外光(波長10 μm)から軟エックス線(波長2 nm)までの吸収スペクトルを計測する体制を整えた。 (3)タンタル酸カリウム結晶にストロンチウムカチオンとランタンカチオンをドーピングして人工合成光触媒のモデルを構築した。ドーピングしたカチオン周辺の原子構造を蛍光エックス線ホログラフィーを用いて決定し、タンタル酸カリウム結晶格子のなかでドーピングしたカチオンが占有するサイトを解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
タンタル酸ナトリウム光触媒に紫外励起光を照射すると、光触媒反応によって酸素が水中に放出されるのではなく、光触媒近傍の溶存酸素が減少する予想外の現象を2022年11月に見いだした。この現象を解釈するために補助事業期間を3ヶ月延長せざるをえなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
(1)補助事業期間を3ヶ月延長して、タンタル酸ナトリウム光触媒への励起光照射による溶存酸素減少が励起電子が溶存酸素に付着する還元反応に起因することを明らかにした。このような酸素還元反応がチタン酸ストロンチウム光触媒でもおきるかどうかを調べる。 (2)UVSORにおける放射光実験で、さまざまな金属酸化物光触媒の酸素K吸収端スペクトルが励起光照射によって変化するかどうかを調べる。
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