研究課題/領域番号 |
22H00345
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
森口 勇 長崎大学, 工学研究科, 教授 (40210158)
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研究分担者 |
瓜田 幸幾 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (40567666)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | Liイオン電池 / 全固体電池 / ナノ多孔カーボン / ナノ複合体 / 酸化スズ / スズ / リン酸鉄リチウム / STEM-EELS |
研究実績の概要 |
本研究では,カーボンナノ細孔空間内を活物質とLiイオンおよび電子の反応場に利用し,また反応に伴う体積変化のバッファ空間として活用することにより,全固体電池の固体電解質層/電極層界面の安定化を図ることを目的とする。さらに,カーボンナノ空間内でのLiイオンの拡散や活物質との反応過程を解明し,多孔カーボン壁構造やナノ空間サイズ等の制御によるLiイオン伝導機能の向上等を図り,ナノ空間を最大限に活用した革新的な全固体電池電極材料の創製を目的とする。 これまで活物質/多孔カーボンナノ複合体の合成を行い,SnO2やPのカーボンナノ細孔内への優先析出に成功しているが,Snについては細孔外への析出・凝集を伴うものであった。今回,有機Sn化合物の熱分解担持やSnO2/多孔カーボンナノ複合体の水素熱還元法を詳細に検討し,後者において還元温度や時間の条件最適化を行い,カーボンナノ細孔内へSnナノ粒子を優先析出させることに成功した。また,多孔カーボンへの固相系でのLiプレドープ法を開発した。 全固体系ハーフセルでの充放電特性評価では,一般にSn ナノ粒子は充放電の繰り返しで凝集,粗大化し,容量劣化することが知られているが,上述のSn/多孔カーボンナノ複合体では,Snの理論容量近くの充放電容量が発現し,安定な充放電サイクル特性を示すことを明らかにした。一方,LiFePO4/イオウ系固体電解質系の充放電特性についても評価し,容量発現には高い作動温度が必要であることがわかった。 さらに,SnO2をカーボンナノチューブ内部に析出させた試料において,充放電過程をSTEM-EELS分析により追跡したところ,Liとのコンバージョン反応によりLixSnとLi2Oのナノ相分離が生成し,SnO2相との可逆的変化が進行していることを突き止め,ナノ空間における固相反応の特長が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
活物質/ナノ多孔カーボン複合体の合成や充放電特性の評価,Liイオンと活物質との反応過程の電子顕微鏡観やEELS分析による評価を計画通り実施し,研究は着実に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,活物質/カーボンナノ多孔複合材料の合成および各種分光法・分析による構造評価を行い,さらに電気化学測定を行って,ナノ多孔複合材料の細孔サイズや空隙体積,活物質の担持量や担持状態等の構造パラメータ,活物質の種類等と充放電特性(容量やレート特性,サイクル特性,クーロン効率等)との関連性を調べ,充放電サイクル安定な高容量発現のための構造最適化を図る。 また,全固体電池電極中のLiイオンの拡散や活物質との反応過程を電子顕微鏡観察やEELS分析等により追跡するとともに,電極内のLiイオン伝導性の向上を図る。
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