研究課題
共生細菌であるボルバキアは昆虫の60%以上に感染していると考えられており、その宿主制御の巧みさも相まって「最も成功した寄生者」と言われている。ボルバキアは性操作・生殖操作を行うが、これらのうち実行因子とその分子機構が解明されているのは、細胞質不和合のみである。私たちは、カイコの性決定遺伝子の研究結果から、オス化と遺伝子量補償を担うMascがチョウ目昆虫における「オス殺し」ボルバキアのターゲットとなっていることを世界で初めて発見した。しかし、ボルバキア側の実行因子やその作用機序については、そのヒントすら得られない状況であった。本研究では、わたしたちが発見したオス殺し候補因子の機能を証明することで、ボルバキアがチョウ目昆虫においてオス殺しを引き起こすメカニズムを明らかにする。一方、ボルバキア感染における「場」と「時間」に着目した研究を行い、ボルバキアの宿主制御について、時空間的な理解を目指す。2022年度は下記の研究を実施した。(1) ボルバキアオス殺し因子候補Oscarの発見と機能解析ボルバキアオス殺し因子Oscarを発見し、それ単独で細胞と個体、両方においてオス化抑制を実行できることを証明した。また、Oscarがさまざまな種のチョウ目昆虫のMascを抑制できることを示した。(2) オス殺しボルバキアゲノムの決定オス殺しアワノメイガ、およびオス殺しアズキノメイガのゲノムを決定し、それらが非常に近縁であるが、ゲノムのリアレンジが起きていることを発見した。
2: おおむね順調に進展している
Oscar、およびオス殺しボルバキアゲノムに関する論文発表を行うことができ、他の研究計画も順調に進んでいるため。
アワノメイガにおける性決定機構の解明を進め、ボルバキアの共生過程でOscarが発現することで失った本来の性決定システムを明らかにする。また、細胞レベルでボルバキアの感染と宿主応答について研究を進める。
すべて 2023 2022 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Microbial Ecology
巻: - ページ: -
10.1007/s00248-023-02198-7
Nature Communications
巻: 13 ページ: 6764
10.1038/s41467-022-34488-y
https://sites.google.com/view/igblab-ut-aba