研究課題/領域番号 |
22H00366
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
勝間 進 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (20378863)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ボルバキア / オス殺し / 共生 / チョウ目昆虫 / アワノメイガ / 共生細菌 / 性決定 / 遺伝子量補償 |
研究実績の概要 |
本研究では、わたしたちが発見したオス殺し候補因子の機能を証明することで、ボルバキアがチョウ目昆虫においてオス殺しを引き起こすメカニズムを明らかにする。一方、ボルバキア感染における「場」と「時間」に着目した研究を行い、ボルバキアの宿主制御について、時空間的な理解を目指す。 1. ボルバキアオス殺し因子Oscarのオス殺しメカニズム 昨年度までにボルバキアオス殺し因子Oscarが、単独で細胞と個体、両方においてオス化抑制を実行できることを証明している。本年度は、Oscar cRNAをインジェクションしたカイコ胚子、およびアワノメイガ胚子を用いたトランスクリプトーム解析を行い、Oscar発現時に遺伝子量補償が破綻していることが明らかになった。つまり、ボルバキアによるオス殺しは、OscarによるMascの無効化、およびそれに基づく遺伝子量補償の破綻によるものであることが判明した。 2. ボルバキア感染細胞におけるscMultiome解析 ボルバキア感染アワノメイガ胚子より作成した培養細胞を用いて免疫染色やFISHを行ったところ、ボルバキアの量が細胞によってかなり異なることが明らかになった。また、ボルバキア量が多い細胞は巨大化し、かつ宿主オス化因子OfMascのタンパク質レベルでの蓄積が顕著に低下していることが明らかになった。このことから、ボルバキアの共生過程、あるいはオス殺しの実現において、細胞集団として検討するのと同時に個々の細胞における「ボルバキア量」と「宿主遺伝子発現(宿主側の応答)」の関係をボルバキアの「細胞間移行」も含め調査する必要があると考えた。この課題を解決するために、ボルバキア感染、非感染アワノメイガの胚子から独自に樹立した培養細胞を用いて、ゲノム、トランスクリプトームのシングルセル解析を行うことを起案した。先進ゲノム支援事業のサポートを受け、実験系の構築を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Oscarのオス殺し機構に関する論文発表を行うことができ、他の研究計画も順調に進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
ボルバキアの共生過程とアワノメイガにおける性決定機構の関係に関する論文を作成する。また、scMultiome解析により1細胞レベルでのボルバキアの感染と宿主応答について研究を進める。
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