研究課題/領域番号 |
22H00368
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中野 龍平 京都大学, 農学研究科, 准教授 (70294444)
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研究分担者 |
牛島 幸一郎 岡山大学, 環境生命科学学域, 准教授 (20379720)
山本 幹博 岡山大学, 環境生命科学学域, 教授 (60274015)
福田 文夫 岡山大学, 環境生命科学学域, 准教授 (60294443)
西村 和紗 京都大学, 農学研究科, 助教 (60835453)
高田 大輔 福島大学, 食農学類, 准教授 (80456178)
鵜木 悠治郎 岡山県農林水産総合センター(農業研究所), 果樹研究室, 技師 (80806977)
森本 拓也 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (90837634)
小田 賢司 岡山県農林水産総合センター生物科学研究所, その他部局等, 専門研究員 (10344409)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 参照ゲノム / 熟期枝変わり / 軟化 / 芳香成分 / loss of heterozygosity / 黒斑病耐性 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、モモ数品種の参照ゲノムの構築と諸形質の制御遺伝子の特定に必要な分離集団の育成を目的とし、以下のような成果を得た。 1)pan-genomeの整備:国内主要品種である‘あかつき’および、重要形質を持つ‘大寿蜜桃’について、Nanoporeによりロングリートを取得し、ドラフトゲノムを構築した。さらに、Saphyr解析によるオプチカルマッピングとRgaTagおよび交配後代を利用した連鎖解析により、それぞれ染色体レベルの参照配列を構築した。また、研究グループが保有するジーンバンクや枝変わり品種中心に、サンプリングをおこうなともに、一部の品種についてはDNA抽出を実施し、WGSデータを取得した。 2)‘大寿蜜桃’の解析:‘大寿蜜桃’では複数個の細胞壁軟化関連遺伝子と芳香成分合成遺伝子、さらに、成熟時に増加する転写因子の発現が抑制されており、軟化がほとんど進まず、香り成分のラクトンおよびエステル類の生成量が低いことが明らかなった。 3)熟期枝変わりの解析:‘あかつき’、 ‘川中島白桃’およびその熟期枝変わり数品種のWGSデータを取得し、1)にて構築された‘あかつき’の参照配列を利用したpangenome解析を行なった。その結果、‘あかつき’の早生枝変わりである‘暁星’の第6染色体の5.5Mbpの領域に loss of heterozygosity (LOH)が多数検出され、この領域において染色体レベルの変異が発生したことにより、早生枝変わりとなったと考えられた。 4)交配後代の育成:‘大寿蜜桃’と’川中島白桃‘の交配後代、黒斑病耐性を持つ‘冬桃’と‘清水白桃’および‘あかつき’と‘川中島白桃’,せんこう細菌病耐性を示す‘Coral’ あるいは‘Chimarita’の自殖後代など多数の集団を育成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
‘あかつき’‘大寿蜜桃’という3品種において、ドラフトゲノムだけでなく、交配後代の種子の子葉を利用した連鎖解析などにより、いち早く、染色体レベルの参照配列を構築した。さらに、次年度以降に予定していた研究グループが保有するジーンバンク品種のWGSデータの取得にも、いち早く着手できている。また、新たに作成した‘あかつき’の参照配列を利用した、熟期枝変わりのpangenome解析により、‘あかつき’の早生枝変わりの一つである‘暁星’の第6染色体にがん細胞などで報告されるloss of heterozygosityが発生していることが明らかとなり、この領域のホモ化が熟期の早生化への関連が示唆された。さらに、‘大寿蜜桃’では、軟化だけでなく芳香成分の生合成にも欠損があることが遺伝子レベルで明らかになった。さらに、‘川中島白桃’とのF1集団について、根域を制限した盛り土栽培により、次年度には果実の評価が可能となっており、上述の形質に分離がみられた場合には、形質を支配する遺伝子の探索に取り掛かることができる。黒斑病耐性に関しては、種子の子葉の一部を連載解析に利用した‘あかつき’と‘あかつき’のF1集団の育成にも成功しており、複数の分離集団により、耐性に関わる遺伝子の探索が可能となっている。その他、せんこう細菌病耐性に関わる集団やこれまでに‘紅博桃’の枝変わりである‘福大1号’において発見しているホモ化により、落果、奇形果、収穫後果肉障害を誘発する第4染色体領域の解析に必要な集団も獲得できている。以上のように、当初の計画以上に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,以下のように,1)pan-genomeの整備おいては、引き続き、参照ゲノムの構築と研究グループが保有するジーンバンク品種の育成とゲノム解析を実施する。2)栽培・形質調査と遺伝解析による諸形質の制御遺伝子の特定においては、解析に利用する交雑集団や枝変わりの育成に加え、一部に関しては形質調査と遺伝解析を実施する。 1)これまでに染色体レベルの参照ゲノムの構築している国内主要品種‘あかつき’および‘大寿蜜桃’に加えて、他の重要品種についてもNanopore によるロングリード解読,Saphyr解析によるオプティカルマッピングや連鎖解析を進める。また、得られた染色体レベルの参照ゲノムについて,遺伝子のアノテーションを付ける。さらに、研究グループが保有するジーンバンクを中心にした品種について、さらにWGSデータを取得するとともに、一部の品種に関して形質を評価する。 2)熟期が極晩生であり・収穫後の軟化が起こらす・香りが少ない‘大寿蜜桃’と通常品種‘川中島白桃’のF1集団を育成し、果実の形質を評価するとともに、分離が検出された形質に関しては、得られた参照配列を用いた解析により、関連する遺伝子座の探索する。また、黒斑病耐性について分離を示すことが予想される‘あかつき’と‘川中島白桃’のF1集団を育成するとともに、黒斑病耐性の評価および構築された参照配列を利用した遺伝解析により黒斑病耐性に関連する遺伝子座を探索する。せんこう細菌病耐性を示す‘Coral’と‘Chimarita’の自殖集団,岡山高糖度系統の後代、熟期や黒斑病耐性が異なる‘冬桃’と‘清水白桃’の後代、国産主要品種の熟期枝変わりを育成する。以上より、モモ数品種の参照ゲノムの構築と諸形質(病害抵抗性,品質(硬度,糖度,香り),熟期など)の制御遺伝子の特定に必要な分離集団の育成と一部の関連遺伝子座の特定を試みる。
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