研究課題/領域番号 |
22H00376
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
浜崎 恒二 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (80277871)
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研究分担者 |
岩田 歩 気象庁気象研究所, 気象予報研究部, 研究官 (30827340)
大林 由美子 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 助教 (60380284)
岩本 洋子 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 准教授 (60599645)
高見 英人 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (70359165)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 微生物 / 波の花 / 大気エアロゾル / 菌叢解析 / 海表面マイクロ層 |
研究実績の概要 |
サブ課題1に関わる研究として、波の花を使った各種測定を行い、手法的な検証と基礎データを得た。波の花の採取と試料処理は、12月に曽々木海岸(石川県輪島市)で実施した。海面に集積した「波の花」サンプルを採取し、同時に海水試料および大気エアロゾル試料を採取した。溶存有機炭素を全炭素測定装置により測定し、今後は粒子態有機炭素量、溶存有機炭素の蛍光特性や官能基の特徴を測定する予定である。ドロップレットフリーズ法により、「波の花」由来の有機物の氷晶核形成能を評価した。さらに実環境下における「波の花」発生の有無での大気エアロゾルの氷晶核数濃度を測定するために、低流量大気エアロゾルフィルター試料の氷晶核活性を直接測定する手法を確立し、粒径分布の測定と並行した実試料の捕集を行った。波の花および海水について、採取当日に、各種人工蛍光基質を用いて、全画分および濾液画分の細胞外酵素活性の測定も行った。サブ課題3に関わる研究として、学術研究船白鳳丸のインド洋航海で得られた海水とエアロゾル試料について、16SrRNA遺伝子アンプリコン解析による菌叢解析を実施した。航海期間に合わせてサンプリング地点の気塊の後方流跡線を調べたところ、ベンガル湾の観測点では陸上由来であったのに対して、南部インド洋では海洋由来と推測された。主に海起源の気塊に由来すると考えられる南部インド洋の粗大粒子の群集構造は、Proteobacteria、Bacteroidetes、Planktomycetes、Verrucomicrobiaの割合が高い点で、表層海水のParticle-associate画分の組成と類似しており、海水中の有機物粒子を起源とするエアロゾル生成を反映している可能性がある。今後、海表面マイクロ層やバブリング実験のデータを解析することにより、この点を検証することができると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、次年度以降に行う「波の花」を使った分解実験に向けて、各種の計測技術のフィージビリティースタディーと「波の花」の化学組成や微生物組成に関する基礎的なデータを得ることを目的としており、これらの当初目的をほぼ達成できた。また、研究室にアーカイブされた航海サンプルを分析することで、海水とエアロゾルの菌叢比較を行い、これも当初予定通りに解析を進めてきた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度採集した「波の花」と海水のフィルタ試料は、DNA/RNA抽出後、16SrRNA遺伝子アンプリコン解析、メタゲノム解析、メタトランスクリプトーム解析を実施し、原核生物の群集構造と機能ポテンシャルの推定を進めると共に、機能遺伝子の発現を調べる。加えて物理・化学的パラメータに関する測定も引き続き行い、それぞれのデータを合わせた解析を実施する。また、バブリングチャンバーを用いたオンラインでの粒子計測と雲凝結核活性測定,微生物のエアロゾル化実験を行う.インド洋のアーカイブサンプルの解析について、SMLサンプルやバブリング実験によるエアロゾルサンプルのデータ解析を進め、大気の化学分析データと合わせて学会発表や投稿論文としてまとめる。また、7月に白鳳丸航海を主席研究者として実施し、海水,海表面マイクロ層,エアロゾル中の糖質分解細菌群の種組成や機能を調べるためのサンプル採取と観測を実施する。
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