研究課題/領域番号 |
22H00381
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
河本 晴雄 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (80224864)
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研究分担者 |
南 英治 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (00649204)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 木材 / 細胞壁 / 超分子構造 / 熱分解 / 反応性 / セルロース / ヘミセルロース / リグニン |
研究実績の概要 |
木材の細胞壁はナノサイズの結晶性セルロースミクロフィブリルの周囲をマトリックス(ヘミセルロースとリグニン)が取り巻く超分子構造を有するが、その詳細については不明な点が多い。一方、木材中のセルロースおよびヘミセルロースの熱分解反応性が単離成分と異なり、反応性に対する影響が樹種(針葉樹と広葉樹)で異なることがスギ(針葉樹)とブナ(広葉樹)を用いた検討により示唆されている。本研究課題では、熱分解反応性と細胞壁におけるナノ集積構造の双方を包括的に解明することを研究目的に、針葉樹、広葉樹それぞれ5種の計10種を用いて検討している。令和5年度の研究では、木材中のセルロースとヘミセルロースの熱分解反応性が樹種により異なるが、カルボキシ基の塩として含まれている金属カチオンを希酸処理により除去することで反応性が大きく変化することがわかり、カチオン交換性の金属カチオンが重要な役割を果たしていることが示唆された。また、スギに対してNa, K, Mg, Caをそれぞれカチオン交換法で導入した木材を熱重量(TG)分析した結果、1価のNa、Kで2価のMg、Caと比べて熱分解温度が大きく低温側にシフトしていることが判明した。さらに、木材中のリグニンの熱分解反応性を検討するための手法として、熱重量分析と気化生成物の質量(MS)分析を組み合わせたTG-MS分析を検討した結果、昇温過程において木材多糖とリグニンより生成する生成物組成を詳細に調べることが可能であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スギとブナで検討されてきた木材細胞壁中でのセルロースとヘミセルロースの熱分解反応性の違いを、針葉樹と広葉樹に一般化できるかどうかをまず確認するところから研究を開始した。熱重量(TG)測定とTG測定と同じ昇温速度で加熱処理して得た残渣の加水分解性糖分析により、熱分解温度と木材多糖の熱分解反応性を針葉樹5樹種と広葉樹5樹種を用いて検討した。突板を用いて検討を進めたことから、炭化過程における収縮挙動を調べることが可能になり、収縮異方性に関する樹種特性の成果も得られている。また、ヘミセルロースおよびペクチン中のカルボキシ基と塩を形成しているアルカリ(Na, K)およびアルカリ土類(Mg, Ca)金属カチオンを希酸処理で除去した試料との比較から、金属カチオンが木材中の木材多糖の熱分解反応性に大きく影響していること、同一の樹種ではキシランとグルコマンナンの反応性に差がないが、広葉樹において針葉樹よりも高い反応性を示すことなどが明らかになった。さらに、スギを用いた検討により、アルカリ金属カチオンを導入することで木材多糖の熱分解反応性が大きく向上することも明らかになった。木材中のリグニンの反応性を知ることは、細胞壁のナノ集積構造の熱分解反応性に及ぼす影響を理解する上で必須であり、その評価方法を提案できずにいたが、TG分析と質量(MS)分析を組み合わせることでリグニンの反応性を検討できることも明らかになった。このように、“概ね順調に進展している”と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度の研究により、カルボキシ基と塩を形成しているアルカリ(Na, K)およびアルカリ土類(Mg, Ca)金属カチオンが木材多糖の熱分解反応性に大きく影響していることがスギを用いて明らかになった。そこで、このような特性が他の9樹種においてもあるのかどうかについて、それぞれの金属カチオンをカチオン交換法で導入した試料の熱重量分析と別途実施する熱分解残渣の加水分解性糖分析による木材多糖の残存量の評価から検討する。また、チャレンジングではあるが、このように金属カチオンの種類により反応性が大きく異なる理由について検討していく予定である。また、これまで木材中のリグニンの反応性については全く検討できていなかったが、TG-MS法を用いて評価することで、木材細胞壁中でのリグニンの熱分解挙動および木材の熱分解挙動を決定しているといえるセルロースの熱分解への影響などについて検討する。
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