研究課題/領域番号 |
22H00384
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
緒方 博之 京都大学, 化学研究所, 教授 (70291432)
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研究分担者 |
遠藤 寿 京都大学, 化学研究所, 准教授 (80795055)
岡崎 友輔 京都大学, 化学研究所, 助教 (40823745)
吉田 天士 京都大学, 農学研究科, 教授 (80305490)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 巨大ウイルス / 無光層 / 深海 / 生態 / 進化 |
研究実績の概要 |
水圏ウイルスは微生物群集動態、物質循環、進化に影響を及ぼす重要な生態系構成要素である。研究代表者らは世界に先駆け、巨大ウイルス(Giant Virus; GV)が水圏に高頻度で存在し、高い系統多様性を示すことを発見し、彼らが多様な真核微生物宿主と相互作用する様相、海洋炭素循環に影響を及ぼす可能性を提示してきた。しかし、これまでの研究は生産性が高く観測が容易な有光層に集中し、水圏の95%を占める無光層に存在するGVの調査は限られてきた。本研究では、有光層から深海にわたり採取したインド洋広域試料と、大容量採水可能な深層水時系列試料を高品質環境オミクス解析に供し、①無光層GVの感染活性と遺伝子組成を特徴づけ、②無光層GVと真核微生物の相互作用を精査し、③主要宿主を同定し、GVとの相互作用を実験的に検証する。 初年度は、室戸深層水研究所を利用した深層水(中深層水、320m深度)の取水を開始した。2022年度は3回の採水を行った。深層水は生物密度が低く、十分な量の海水を濾過するシステムの構築が重要な課題であった。当初のシステムでは十分な量の核酸を抽出できるにはいたらず、濾過システムの改良を進めた。科研費の繰越システムにより当該年度の計画を2023年に延長し、2023年前半には、最終的な濾過システムが決定できた。並行して、16S アンプリコン解析等により、重要な課題であった表層及び深層水の水質に関して問題ないことを確認できた。また、インド洋広域試料の解析に関しては、真核微生物群集の解析を進めた。さらに、海洋のみならず、湖沼における公共メタゲノムデータを利用することにより、無光層におけるGVの解析を開始した。公共データを利用することにより、研究対象の環境を拡大できたのみならず、バイオインフォマティクスのパイプラインの構築も早めに進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
濾過システムの構築には試行錯誤が必要であった。当初は、加圧式ポンプを利用する方法、プランクトンネットを利用する方法を試した。しかし、加圧式ポンプは時間がかかる一方、プランクトンネットはメッシュが5umと比較的大きかったため、メタオミクス解析を実施するために十分な量の生物を捕獲できないと判断された。試行錯誤の結果、取水口に直接フィルター装置を接続するという、最もシンプルな方法が最大効率を与えるとの結果を得た。この過程は時間がかかったが、本研究を推進するために必須のステップであった。一方、公開メタゲノム解析を利用した方法で、平行して研究を進めたところ、無光層における巨大ウイルスの存在や動態を把握でき、研究全体では順調に目的を達成できたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
室戸深層水研究所を利用した試料採取に関しては、2023年度~2024年度前半にかけて完了する予定である。同時に解析も2023年度~2024年度に完了する予定である。インド洋のデータに関しては、メタゲノム(4サンプル)からの、巨大ウイルスゲノムの抽出を実施する。また、公共メタゲノムを利用した湖沼由来の巨大ウイルスの解析も2023年度に推進する。
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