研究課題/領域番号 |
22H00396
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松脇 貴志 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (20447361)
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研究分担者 |
藤澤 彩乃 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任助教 (10624885)
渡辺 雄貴 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 助教 (50781788)
川口 真以子 明治大学, 農学部, 専任准教授 (30409388)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 視床下部 / 低体温 / プロスタグランジンE2 / 性周期 |
研究実績の概要 |
哺乳類の体温は生体の恒常性にとって最も重要な因子の一つであり、中枢神経系によって一定範囲の温度に保たれている。視床下部視索前野は発熱中枢として知られ、プロスタグランジンE2(PGE2)がこの部位に働くことで、体温の上昇が引き起こされる。一方で体温低下の機構は依然として不明な点が多い。我々は過去に、野生型マウスに体温上昇を引き起こす量の細菌毒素をPGE2合成酵素(mPGES-1)欠損(KO)マウスに投与すると、発情前期の雌特異的に体温が逆に一過性の低下を呈することを見出した。そこで我々は脳内には発熱中枢だけではなく体温低下中枢が存在するという仮説を得て、本研究ではスウェーデンリンショーピン大学のBlomqvist博士らと協力してこの制御機構の解明を目指してる。この発情周期依存的な感染性体温低下の機構を明らかにするため、2022年度の研究では、性周期判別やホルモン処置がより簡便であるとともに内分泌学的な研究実績や手法が蓄積された動物であるラットにおいて同遺伝子のKOモデルを確立し、この研究に用いることとした。得られたKOラットは実験的感染刺激としてのLPS投与に対し脳脊髄内でのPGE2濃度増加が起こらず、発熱反応を示さなかった。KOラットの雌動物はWT動物と同様に4日周期での正常な性周期回帰を呈した。 一方、mPGES-1 KOマウスの感染性体温低下時視床下部から体温低下誘導因子として同定したIFNγについて、その受容体の遺伝子とmPGES-1との二重KOマウスを作出した。このKOマウスの雌は正常に性周期を回帰するにも関わらず、mPGES-1単独KOマウスでみられたLPS反応性低体温は消失していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
作出したmPGES-1 KOラットが雌雄ともに低体重を示したため、その解析のために2022年度の研究費を一部繰越した。自家交配を続けた影響を疑い、新たに購入したラットとの戻し交配も行ったが、その産子らも依然として低体重であった。しかしその後の解析の結果、極端な低体重を呈する個体はごく一部であり、その他の個体は本来の目的である感染性体温変化の解析のための実験に十分耐えうることが確認できた。今後はこれらのラットを用いて体温反応性の性周期依存性の検討とその機序の解析を行う。 mPGES-1/IFNγR1二重欠損マウスの雌でLPS依存性体温低下が消失したことから、IFN情報伝達系がこの症状の発現に大きく寄与していることが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
1. mPGES-1 KOラットの雌を用いて、性周期ごとのLPS誘導性体温変化を解析する。 LPS投与後のmPGES-1雌マウスにのうち低体温を示したもの、体温変化がないもの、および2. 野生型雌マウスの発熱を示したものの3群について、脳全域の神経活動パターンをcFos免疫染色により解析する。 3. mPGES-1/IFNγR1二重欠損雌マウスに卵巣摘出を施し、高濃度のエストロゲンを処置した上でLPSを投与して発熱変動を観察する。
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