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2023 年度 実績報告書

異常翻訳の感知応答と解消システムの分子機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22H00401
研究機関東京大学

研究代表者

稲田 利文  東京大学, 医科学研究所, 教授 (40242812)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード翻訳品質管理 / 衝突リボソーム / 統合ストレス応答 (ISR) / リボトキシックストレス応答 (RSR) / 機能欠損リボソームを分解する品質管理機構 / 脱ユビキチン化酵素 / 高速AMF
研究実績の概要

本研究では、異常翻訳の感知応答システムと異常翻訳を解消するシステムの解明を目指して、昨年度までに3項目について解析を行い以下の原著論文を発表した。
①異常翻訳の解消機構の解析:RQT複合体が衝突リボソームを40S/60S各サブユニットに解離する反応を再現し、RQT複合体のATPaseヘリカーゼによるmRNA引っ張りモデルを提唱した(Best et al., Nat Communi 2023)。衝突リボソームのユビキチン鎖をRQT複合体が認識する過程を高速AMFに直接観察に成功した(Matsuo et al., Nat Communi 2023)。機能欠損リボソームを分解する品質管理機構18S NRDにおいて異常翻訳を認識する因子Fap1を同定し、異常翻訳の実体が単独で停滞したリボソームであることを示した(Li et al., Mol Cell 2022)。また、RQC における脱ユビキチン化酵素 (DUB) の役割を見出した(論文投稿中)。
②異常産物の分解機構の解明:異常タンパク質のCATテール付加反応におけるeIF5Aの新規機能を出芽酵母で解明した(Petr, Ebine et al., Mol Cell 2023)。さらに CATテール形成機構を哺乳類細胞の系を用いて解析し、疾患変異による欠損と表現型との関連を解析した。
③異常翻訳を感知し細胞応答を誘導するシステムの解析:哺乳類細胞の試験管内翻訳系を用いて衝突リボソームとZNF598によるユビキチン化、RQT 複合体による解離反応を再現した(Narita et al., Nat Communi 2022)。また、哺乳類細胞における翻訳停止に伴うRS RとISRの誘導機構を解明し、リボソームが終止コドンで停止する結果、リボトキシックストレス応答 (RSR) および統合ストレス応答 (ISR) が誘導された。GCN2 は eIF2alphaリン酸化に少なくとも部分的に依存して 40S の下方制御に寄与するが、ZAK-p38 軸は 60S の上方制御に不可欠であることを見出した(論文投稿中)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の予定以上に以下の研究成果が得られた。①異常翻訳の解消機構の解析: RQT複合体が衝突リボソームを40S/60S各サブユニットに解離する反応を再現し、RQT複合体のATPaseヘリカーゼによるmRNA引っ張りモデルを提唱した(Best et al., Nat Communi 2023)。衝突リボソームのユビキチン鎖をRQT複合体が認識する過程を高速AMFに直接観察に成功した(Matsuo et al., Nat Communi 2023)。機能欠損リボソームを分解する品質管理機構18S NRDにおいて異常翻訳を認識する因子Fap1を同定し、異常翻訳の実体が単独で停滞したリボソームであることを示した(Li et al., Mol Cell 2022)。また、RQC における脱ユビキチン化酵素 (DUB) の役割を見出した(論文投稿中)。
②異常産物の分解機構の解明:異常タンパク質のCATテール付加反応におけるeIF5Aの新規機能を出芽酵母で解明した(Petr, Ebine et al., Mol Cell 2023)。さらに CATテール形成機構を哺乳類細胞の系を用いて解析し、疾患変異による欠損と表現型との関連を解析した。
③異常翻訳を感知し細胞応答を誘導するシステムの解析:哺乳類細胞の試験管内翻訳系を用いて衝突リボソームとZNF598によるユビキチン化、 RQT 複合体による解離反応を再現した(Narita et al., Nat Communi 2022)。また、哺乳類細胞における翻訳停止に伴うRS RとISRの誘導機構を解明し、リボソームが終止コドンで停止する結果、リボトキシックストレス応答 (RSR) および統合ストレス応答 (ISR) が誘導された。GCN2 は eIF2alphaリン酸化に少なくとも部分的に依存して 40S の下方制御に寄与するが、ZAK-p38 軸は 60S の上方制御に不可欠であることを見出した(論文投稿中)。

今後の研究の推進方策

翻訳品質管理機構の全容解明を目指し ①異常翻訳の実体、②異常翻訳を感知し細胞応答を誘導するシステム、③異常翻訳の解消機構について、今年度は以下を明らかにする。
①異常翻訳の解消機構の解析:RQC経路の最終段階で異常タンパク質にCATテールと呼ばれるタグ配列が付加される分子機構を哺乳類細胞の系を用いて解析し、疾患変異による欠損と表現型との関連を解析する。また、哺乳類細胞における機能欠損リボソームを分解する品質管理機構18S NRDの機能を解析する。
②異常産物の分解機構の解明:哺乳類細胞において、試験管内翻訳系を用いて衝突リボソームとZNF598によるユビキチン化、 RQT 複合体による解離反応を再現した。2つのユビキチン化部位(uS10とeS10)における機能分担が強く示唆されたため、各種変異細胞と試験管内再構成系を用いて、RQT 複合体による解離反応の実体を解明する。
③異常翻訳を感知し細胞応答を誘導するシステムの解析:哺乳類細胞において衝突リボソームのユビキチン鎖をRQT複合体が認識する過程を高速AFM等で観察する。衝突リボソームの脱ユビキチン化反応の分子機構と衝突リボソーム解消における機能を解明する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] The UFM1 system: Working principles, cellular functions, and pathophysiology2024

    • 著者名/発表者名
      Komatsu Masaaki、Inada Toshifumi、Noda Nobuo N.
    • 雑誌名

      Molecular Cell

      巻: 84 ページ: 156~169

    • DOI

      10.1016/j.molcel.2023.11.034

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Mechanistic insights into the roles of the UFM1 E3 ligase complex in ufmylation and ribosome-associated protein quality control2023

    • 著者名/発表者名
      Ishimura Ryosuke、Ito Sota、Mao Gaoxin、Komatsu-Hirota Satoko、Inada Toshifumi、Noda Nobuo N.、Komatsu Masaaki
    • 雑誌名

      Science Advances

      巻: 9 ページ: eadh3635. 1-16

    • DOI

      10.1126/sciadv.adh3635

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Ubiquitin code for helicase-driven clearance of colliding ribosomes by the RQT complex2023

    • 著者名/発表者名
      稲田利文
    • 学会等名
      RNA meets protein decay
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] The Molecular function of Cue2 and Mbf in No-go Decay2023

    • 著者名/発表者名
      友松翔太
    • 学会等名
      28th Annual Meeting of the RNA Society
    • 国際学会
  • [学会発表] Ubp3 degradation by Grr1 increases eS7A ubiquitination and promotes HAC1i translation under ER stress conditions2023

    • 著者名/発表者名
      佐藤二千翔
    • 学会等名
      第24回 日本RNA学会年会
  • [学会発表] 小胞体ストレス条件下、Grr1はUbp3の分解を介してeS7Aのユビキチン化を上昇させ、HAC1iの翻訳促進に寄与する2023

    • 著者名/発表者名
      佐藤二千翔
    • 学会等名
      第46回 日本分子生物学会年会

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公開日: 2024-12-25  

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