RNAヘリカーゼはATPの加水分解を利用し立体構造を変化させ、ATP依存的に二本鎖RNAと結合・解離する。RNAヘリカーゼは複数のタイプに分類され、そのうちRIG-I様RNAヘリカーゼは免疫機構において重要な役割を担っている。本研究課題では、クライオ電子顕微鏡および高速原子間力顕微鏡を用いた静的・動的な立体構造解析を行い、RIG-I様RNAヘリカーゼの多様な作動メカニズムを解明する。本年度は、前年度に調製したMDA5タンパク質、RNAを用いて、in vitroにおいてMDA5:RNAフィラメント複合体を再構成し、クライオ電子顕微鏡を用いた構造解析をおこなった。先行研究を参考に、ヒト由来MDA5と長鎖dsRNAを混合することにより再構成したMDA5:RNAフィラメント複合体をグリッド上で瞬間凍結し、クライオ電子顕微鏡TalosArcticaを用いて電子顕微鏡画像データを取得した。プログラムCryoSPARCによる画像解析の結果、ヒトMDA5:RNAフィラメント複合体の密度マップを得ることに成功し、プログラムCOOTとプログラムPhenixを用いてモデル構築と構造精密化を行い、MDA5:RNAフィラメント複合体の立体構造を決定した。さらに、様々なATPアナログ(AMPPNPやADPなど)の存在下でMDA5:RNAフィラメント複合体を再構成し、複数の複合体構造を決定した。これらの複合体構造の比較から、ヒトMDA5によるATP加水分解サイクルにおけるRNA認識のメカニズムを明らかにした。
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