研究実績の概要 |
本年度の研究では、以下の3点に焦点を絞り、研究を推進した。すなわち、 1) 逆シナプスタグ化機構解明を糸口にした、長期貯蔵される連合記憶シナプス情報表現の解読のための各種細胞内情報伝達シグナル計測について、基盤的検討を実施した。 2)連合記憶長期貯蔵を規定する皮質-皮質下回路を新たに解明するための条件整備を進めた。 3)遠隔記憶貯蔵メカニズム操作による長期記憶表現型修飾を実現するための条件検討を開始した。 初年度である令和4年度においては、特に、シナプスレベルでの逆シナプスタグ生成・維持に寄与するカルシウム・CaMKII シグナルの可視化実験手法等を構築していった。その間に作出したプローブ構造の検証を目的として、CaMKII-alpha分子の知的障害変異体の点変異活性相関を検討し、その変異の多くがgain-of-funtion 変異である可能性を明らかにした(Fujii et al. Front. Mol. Neurosci., 2022)。加えて、広範囲で2光子顕微鏡イメージングを実現する簡便なプラスチック膜による脳表観察窓作成方法の開発にも関与した(Manita et al. JoVE, 2022)。さらに、遠隔記憶形成時における大脳皮質とその他の部位の間の新たなconnectivity制御の可能性を見出した。また、E-SARE 陽性細胞のin vivo同定と、神経活動同時計測により、オペラント学習過程における柔軟な脳活動動態の遷移に関する予備的検討を開始した。
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