現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当グループではこれ迄、外界から入力してくる外的匂いの情報処理について研究してきた。最近他の五感についても研究が進み、体内から発せられる内的情報について関心が高まっている。嗅覚系においても、口に入れて咀嚼した食べ物の匂いや、口に含んだワインの香り、更には体の不調を示す体内からの匂いなど、内的情報の研究が進んでいる。嗅覚系では、匂い情報を画像展開する糸球体マップが左右の嗅球に一対存在する。ところが、これら左右のマップは更に外側マップと内側マップの2つの対称的なマップに重複している為、匂い地図は計4個形成される事になる。この内・外の重複マップの意味については長年議論されてきたものの、実際の機能分担については不明であった。当グループではこれ迄の生理学的データを基に、森憲作博士(東大名誉教授・生理学)と共同で、内側マップが内的な匂い情報を、外側マップが匂いの外的環境情報を、それぞれ呼吸サイクルの呼期と吸期に連動させて、別々に処理しているとの仮説を提出し、それを検証する研究を進めている。 また、本能回路と学習回路に関しては、それぞれを担当する二次神経、僧帽細胞と房飾細胞が、呼期と吸期に分かれて活性化する事から、先天的な判断と記憶に基く価値判断の呼吸サイクルに合わせた制御についても研究を開始した (Mori and Sakano, Front. Neural Circuit, 2022: Front. Behav. Neurosci., 2022)。 更に刷り込み現象に関しては、これまで特定の匂いに対する価値付け変更について研究を進めてきたが、最近これとは別に、外界入力に対しての価値判断にグローバルな閾値の初期設定が、新生仔期に起こる事を見出した (Katori et al., 投稿準備中)。 以上の様に本研究は、当初の計画通り順調に進展している。
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