研究課題
BACH1の発現を操作する実験系としてAIDを用いる系を予定したが、Tet repressorを使う系が順調に進んだことから、これを用いた実験系を優先的に進めた。BACH1ノックアウトマウス線維芽細胞にTet repressor-VP16融合転写因子発現プラスミド、およびTet結合配列を含むプロモーター下流にBACH1コード配列を連結したプラスミドを導入した。薬剤選択後にクローン化し、得られた複数のクローンについてBACH1発現レベルをチェックした。ドキシサイクリン非添加時と添加時を比べると添加時にBACH1発現レベルが上昇することを確認したが、非添加時でもBACH1の発現が観察された。これら細胞株をメルカプトエタノール不含培地で培養したところ、線維芽細胞が効率良く細胞死へ向かうことを見いだした。この細胞死はBACH1非導入細胞では観察されず、また、BACH1導入細胞株ではBACH1発現レベルと細胞死頻度が相関した。さらに、この細胞死は鉄キレート剤、フェロトーシス阻害剤で抑制され、アポトーシス阻害剤等では抑制されないこと、遊離鉄上昇とグルタチオン低下、過酸化脂質上昇などを伴うことから、BACH1再発現が鉄依存性細胞死フェロトーシスを誘発すると結論した。すい臓癌細胞におけるBACH1による接着分子遺伝子の発現抑制が自由鉄を介することを見いだした。ヒトすい臓癌細胞株、頭頸部癌細胞株、B細胞株を用いたBACH1やBACH2のクロマチン免疫沈降シークエンスおよびRNAシークエンスのデータを統合解析し、鉄・ヘム代謝に関わるBACH1標的遺伝子候補を同定した。合わせて、炎症応答などがん微小環境形成に関わる可能性のあるBACH1標的遺伝子候補なども同定した。
2: おおむね順調に進展している
Tet repressor の系は発現の漏れがあったことから、次はAID系の構築を進める。
項目1 BACH1発現誘導系、BACH1ノックアウト線維芽細胞へ導入し安定発現細胞株を作成し、得られた細胞株におけるBACH1標的遺伝子の発現、鉄代謝の変化、鉄依存性細胞死フェロトーシスの変化を比較する。項目2 前年度に作成したヒト膵臓癌における鉄関連BACH1標的遺伝子候補リストの中で癌進展と関連が予想されるものについて、ノックダウン実験などにより機能を調べる。項目3 共同研究先で開発されたBACH1阻害剤の誘導剤を入手し、細胞レベルでのBACH1およびその標的遺伝子発現への作用を確認する。
すべて 2022 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 4件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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