研究実績の概要 |
A. 核内脂肪滴形成機序の解明 a) 合成過程:Crispr/Cas9法でトリグリセリド (TG) 合成酵素DGAT1, DGAT2、コレステロールエステル (CE) 合成酵素ACAT1, ACAT2を単独あるいは複数欠損する細胞を作製して調べた結果、TG合成酵素のいずれかがないと核内脂肪滴は形成されないことが分かった。TG合成酵素欠損細胞に内核膜にアクセスできない変異を持つDGAT1, DGAT2を導入した場合でも核内脂肪滴は形成され、内核膜でのTG合成は必須でないことが明らかになった。b) 分解過程:同様にTG分解に関わるATGL, HSLを欠損する細胞を作製して調べたところ、ATGLが核内脂肪滴に有意の影響を与えたのに対し、HSLは影響しないことが分かった。さらにATGLと結合してTG分解を促進するABHD5、ATGL阻害タンパク質G0S2, HILPDAについて、RNAi法によるノックダウン過剰発現を行い、ATGL欠損細胞の結果と整合する結果を得た。 B. PML小体の解析 a) 構成成分の網羅的解析:核内脂肪滴は核内構造体の1つであるPML小体と共局在する。核内脂肪滴形成がPML小体の構成成分に及ぼす影響を解析するため、PML小体または核内脂肪滴にターゲットするTurboIDプローブの作出を試みた。種々検討の結果、核内脂肪滴の脂質に結合する分子とTurboIDをつないだプローブで核内脂肪滴周囲だけにビオチン化を誘導することができ、プロテオミクスによる解析を開始した。b) PMLの性質の解析:核内脂肪滴がPML小体の液滴としての性質に与える影響をFRAPで調べるため、Aで作出した細胞にClover-PMLをノックインし、内在性レベルで発現させる系を確立した。
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