双極性障害患者トリオ家系(患者とその両親)の高深度エクソームシーケンス解析を行った。これらの家系で見いだされたモザイク変異について、その特徴を調べ、神経発達障害の原因遺伝子上の機能障害モザイク変異が双極性障害患者に多いという特徴を見いだした。この特徴は、双極性障害のモザイク変異に特徴的であった。機能障害変異がモザイクで見られた神経発達障害の原因遺伝子にコードされているタンパク質は、密接に結合したタンパクータンパクネットワークを形成していることがわかった。ケースコントロールサンプルの中からも、3名の双極性障害患者から神経発達障害の原因遺伝子の機能障害性の変異が見いだされた。また、ミトコンドリアDNA(mtDNA)のヘテロプラスミー変異では、患者でtRNA変異の割合が高く、これは双極性障害に特異的な所見であることがわかった。ケースコントロール解析でも、双極性障害ではtRNAのヘテロプラスミー変異が多く、特に、特にミトコンドリア病MELAS(Mitochondrial myopathy,encephalopathy,lactic acido- sis,stroke-like episodes)の原因変異であるm.3243A>G変異の頻度は、双極性障害では一般集団に比べて高かった。これらの結果から、双極性障害には、神経発達障害の原因遺伝子がモザイク変異として存在していること、あるいは神経症状を引き起こすミトコンドリア病であるMELASの原因遺伝子が、ミトコンドリア病よりも低い率で存在していることが関係していると考えられた。
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