• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2023 年度 実績報告書

双極性障害における体細胞変異の意義の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22H00468
研究機関順天堂大学

研究代表者

加藤 忠史  順天堂大学, 医学部, 教授 (30214381)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード双極性障害
研究実績の概要

双極性障害で検出されたモザイク変異の特徴を調べた結果、自閉スペクトラム症(ASD)の原因遺伝子の機能障害モザイク変異が多いことがわかった。特に、ヘテロ欠損がASDと関連することが示唆されているKMT2Cの機能喪失変異が検出されたことは注目され、この変異は、生殖系列変異ではASDを、モザイク変異では双極性障害をもたらす可能性が考えられた。
KMT2Cは、ヒストンH3のリジン4(H3K4)のメチル化酵素をコードしているが、ASDを引き起こすメカニズムは明らかにされていなかった。そこで、KMT2C のヘテロ欠損を持つマウスを作製し、行動解析を行った。その結果、Kmt2c 変異マウスは、スリーチャンバー試験において社会行動の異常を示した。インテリケージを用いて、行動の柔軟性を評価したところ、環境の変化に対して柔軟に対応できず、こだわる傾向が見られた。この行動変化の分子メカニズム解明を目指し、トランスクリプトーム解析を行ったところ、発現が変動していた遺伝子には、既知のASD関連遺伝子がエンリッチしていた。シングルセルRNAシーケンス法により解析したところ、放射状グリアや未成熟神経細胞にASD関連の発現変動遺伝子がエンリッチしていたことから、ASDの病態には神経系分化の初期段階におけるKmt2c欠損が関与していると考えられた。一方、Kmt2c変異マウスのASD様行動は、ヒストン脱メチル化酵素 LSD1 阻害薬Vafidemstatにより改善し、Kmt2c変異マウスにみられる発現変動遺伝子の多くが薬剤投与により反対方向の発現変動を示したことから、成長後のヒストンメチル化の改善でも、行動に影響しうることがわかった。
また、双極性障害患者で見られたmtDNAのm.3243A>G変異の意義について更に検討するため、この変異を有する患者に同意を得て、血液からのiPS細胞作成を開始した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の予定通り、体細胞変異を見いだし、モデルマウスによる解析、iPS細胞による解析を予定通り進めることができた。

今後の研究の推進方策

これまで得たデータを出版すると共に、更なる研究を進めていく。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)

  • [雑誌論文] Transcriptomic dysregulation and autistic-like behaviors in Kmt2c haploinsufficient mice rescued by an LSD1 inhibitor2024

    • 著者名/発表者名
      Nakamura Takumi、Yoshihara Toru、Tanegashima Chiharu、Kadota Mitsutaka、Kobayashi Yuki、Honda Kurara、Ishiwata Mizuho、Ueda Junko、Hara Tomonori、Nakanishi Moe、Takumi Toru、Itohara Shigeyoshi、Kuraku Shigehiro、Asano Masahide、Kasahara Takaoki、Nakajima Kazuo、Tsuboi Takashi、Takata Atsushi、Kato Tadafumi
    • 雑誌名

      Molecular Psychiatry

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1038/s41380-024-02479-8

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Deep exome sequencing identifies enrichment of deleterious mosaic variants in neurodevelopmental disorder genes and mitochondrial tRNA regions in bipolar disorder2023

    • 著者名/発表者名
      Nishioka Masaki、Takayama Jun、Sakai Naomi、Kazuno An-a、Ishiwata Mizuho、Ueda Junko、Hayama Takashi、Fujii Kumiko、Someya Toshiyuki、Kuriyama Shinichi、Tamiya Gen、Takata Atsushi、Kato Tadafumi
    • 雑誌名

      Molecular Psychiatry

      巻: 28 ページ: 4294~4306

    • DOI

      10.1038/s41380-023-02096-x

    • 査読あり / オープンアクセス

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi