研究課題
膵癌は5年生存率が10%以下と難治がんの代表でその治療法の開発は社会的緊急性が高い。膵癌の治療抵抗性の要因として豊富な間質とそれに付随する腫瘍免疫抑制的環境がある。近年、免疫チェックポイント阻害剤が注目されているが、既存の免疫療法の膵癌での有効性は限られており、膵癌の免疫微小環境の特殊性が示唆される。血液腫瘍と異なり固形がんでは抗腫瘍免疫を抑制する免疫微小環境が構築されており、周囲に存在する特定の癌関連線維芽細胞(CAF)クラスターがその微小環境の形成・維持に関わることも報告されている。この特定のCAFクラスターによって誘導・維持される免疫抑制性の微小環境を克服すれば免疫療法のみならず様々な治療法との相乗効果が期待できる。そこで我々は特性のCAFクラスターを標的とする手法としてキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)に着目した。scRNAseqデータに基づいて特定の機能的CAFクラスターを標的とすることで、癌間質相互作用や物理的な間質構造改変のみならず、免疫抑制性微小環境の改変を実現する。膵癌患者24例のpublic dataから入手可能なscRNAseqデータから、CAFと予後に関連のある496遺伝子を選定し、その中でT細胞の疲弊化と相関のある130遺伝子を同定した。また、CAFの各マーカーとの関連も検討し、特定のCAFクラスターを同定していく。さらにscRNAseqデータからCAR-T細胞療法の候補として有用と思われる遺伝子が特定されつつあるため、CAF以外にも膵癌細胞を標的としたCAR-T細胞の作製も進める。
2: おおむね順調に進展している
膵癌患者のscRNAseqデータから、CAFと膵癌細胞のそれぞれに発現している候補遺伝子を探索し、CAR-T細胞療法の標的候補を絞り込んでおり、標的候補分子のうちいくつかの分子については、免疫染色等で発現を確認しているところであり、おおむね順調に進展していると言える。
今後は、CAFと膵癌細胞のそれぞれに発現している候補遺伝子を、各クラスターで再度解析し、さらなる標的候補分子を探し出す。また、標的分子が発現している細胞特異的なマーカーも特定していく。免疫染色等にて標的細胞にだけ発現することを確認できた候補分子については、CARを作製する。In vivoでの検討も進められるように、マウス膵癌細胞にヒト候補分子を発現させた細胞株の作製も行う。
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Clinical and Translational Medicine
巻: 13 ページ: e1181
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Cancers
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