研究課題/領域番号 |
22H00503
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
浮穴 和義 広島大学, 統合生命科学研究科(総), 教授 (10304370)
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研究分担者 |
坊農 秀雅 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 教授 (20364789)
岩越 栄子 広島大学, 統合生命科学研究科(総), 特任准教授 (50311296)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 新規小タンパク質 / 脂肪蓄積 / 生活習慣病 |
研究実績の概要 |
我々は、最近、新しい視床下部分泌性小タンパク質(Neurosecretory Protein GL:NPGL)を発見しており、哺乳類のラットやマウスにおいて、過食や肥満を引き起こすことを見出した。普通食摂餌下では、NPGLは白色脂肪組織特異的に脂肪を蓄積し、一方で肝臓や筋肉での異所性脂肪蓄積は生じさせないことを見出した。一方、昨今、糖尿病予防・治療として炭水化物制限食が推奨されており、大量の炭水化物食摂取は肥満や生活習慣病発症を引き起こすことは世間でよく知られた事実である。以上の背景から、NPGLの脂肪蓄積作用を検討することで生活習慣病発症の予防に役立つことが期待できる。本年度の研究では、NPGLのパラログ因子であるNPGMにも着目し、下記の研究を展開した。 CRISPR-Cas9システムを用いて、NPGM前駆体遺伝子の下流にDNA組換え酵素であるCreを組み込んだNPGM-Creマウスを作製し、NPGMニューロン特異的な解析を行った。まず、NPGMニューロン特異的にNPGL遺伝子過剰発現を行った結果、白色脂肪組織重量が増加した。次に、人工リガンド(CNO)特異的に活性化する人工受容体(DREADD)を用いて、急性及び慢性的なNPGMニューロンの活動が全身のエネルギー代謝調節に及ぼす影響を検証した。その結果、摂食量の増加や体重増加量の上昇を見出した。最後に、アポトーシス誘導酵素であるカスパーゼの改変型を用いて、NPGMニューロンを特異的に除去する実験を行った。その結果、摂食量や体重、脂肪組織重量に変化は認められなかったが、耐糖能がわずかに悪化した。また、皮下脂肪組織におけるM1マクロファージの存在比が増加した。以上の結果から,NPGMは脂肪蓄積に関与し、NPGMニューロンは脂肪組織における炎症反応を介して耐糖能を調節していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた研究を遂行できたため。
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今後の研究の推進方策 |
現在、NPGL産生細胞特異的に活性化・不活性化可能なCreマウスを作製しており、繁殖と予備実験を進めている。本マウスを用いて、時期特異的な刺激や不活性化を行い、生じる表現型を解析する。このことでより詳細な作用機序を解明したい。
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