研究課題/領域番号 |
22H00512
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
村松 正吾 新潟大学, 自然科学系, 教授 (30295472)
|
研究分担者 |
安田 浩保 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 研究教授 (00399354)
大竹 雄 東北大学, 工学研究科, 准教授 (90598822)
早坂 圭司 新潟大学, 自然科学系, 教授 (40377966)
劉 雪峰 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (50571220)
永原 正章 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (90362582)
小野 峻佑 東京工業大学, 情報理工学院, 准教授 (60752269)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 信号処理 / 制御理論 / 接空間学習 / 動的システム / データ駆動モデリング / 次元削減 |
研究実績の概要 |
計測技術の発展と共に,複雑な物理現象の理解と予測,制御への要求が高まり,データ駆動によるモデル化,特に,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を利用した手法が有力視されてきた.しかし,CNNは解釈性に乏しく,領域知識をその構造に反映し難い課題がある.そこで本研究では,畳み込み層の局所性を継承し,ユニタリ性の構造制約の下で適応制御可能な線形層の実現を試みている.接空間に直接対応するその構造は高い解釈性を与え,現象の理解を促進し,その予測と制御に高性能化をもたらすことが期待できる.防災に重要な河床や地盤の変動を事例とし,情報学,土木工学,数学,物理学の融合研究体制で課題に取り組み,防災応用での有効性の実証を目指している.具体的には,動的システムのモデル化に有効な線形構造を探求している.新たに局所構造化ユニタリ層を導入し,汎用的で解釈性が高いデータ駆動による動的システムのモデリング手法の確立に取り組んでいる.2022年度は主に局所構造化ユニタリネットワーク(LSUN)の学習設計に取り組んだ.以下に成果をまとめる. (i) 開発: LSUNをソフトウェア実装し,データ駆動による動的システムのモデル化を行う環境を整えた.(ii) 解析:Burgers方程式に従う時系列データの解析をとおして,LSUNの性能評価を実施した.(iii) 実証: 河川の河道変動の実験や地盤の変動の観測から時系列データを取得し,畳み込み構造などLSUNに関連する動的システムモデリング手法の提案と評価を進め,LSUNの有効性の実証に必要なデータや手法の整理を行った. なお,提案手法の基礎的な評価には数値計算ソフトウェアMATLABを採用し,ソースコードを公開するための準備も進めた.適宜,国内学会,国際会議にて成果発表を行うと同時に,基礎的な研究成果の学術論文誌への投稿準備も進めた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,複雑な動的システムの数値的なモデル構築に解釈性を与え,領域知識との融合をもたらすモデル化手法を確立するため,新たな多様体の埋め込み手法として,畳み込み層に代わる局所構造化ユニタリ層を提案し,その可能性を探求している.2022年度の当初は以下の実施計画を立てていた.(i)開発: LSUNを実装,観測データによるパラメータ学習と時系列データ予測を実施.(ii) 解析:観測データを分析し,状態ベクトルを定義.LSUNの微分幾何学的解析を実施.(iii) 実証:河川の河道変動と地盤の液状化の実験を実施. 上記のうち,(i)および(iii)を順調に進めることができた.(ii)についてはシミュレーションによる数値解析にとどまったが,今後,進みを速めて遅れを取り戻す. ほかに,今後のLSUNの応用展開に深く関わる研究として,構造化畳み込みネットワークの深層ループ展開や自己教師あり学習,凸最適化手法を利用したボリュームデータ復元などの研究も進めた.広く研究成果を公表し,関係する分野の人脈の構築と最新情報を収集するために国内学会,国際会議への参加も積極的に進めた. コロナ禍の影響で対面による学会参加の機会が予定より少ない結果となったが,その分,高性能な計算機やFPGAアクセラレータ,開発ソフトウエアなど研究に必要な機材について環境を整え,大学院生を中心に人材育成も行い初年度として順調にプロジェクトを進めることができた.一方,提案するLSUNのPython深層学習フレームワークPyTorchでの実装やFPGA実装については実現に及んでいない.これら実装については2023年度以降も継続して進める.また,2022年度中に公表が間に合わなかったLSUNの基礎的な研究成果があるため,これら成果についても早急に論文としてまとめ2023年度内に公表する.
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度は,提案するLSUN と動的モード分解(DMD)を融合するモード分解LSUN自己符号化器(MD-LSUN-AE)の制御を中心に,これまでと同様,開発,解析,実証の3グループの体制で以下のテーマに取り組む. (i) 開発: MD-LSUN-AE による動的システムの制御を実施,接空間制御パスを構築.(ii) 解析: LSUN からの接空間学習結果を解析,対象動的システムの解析的物理モデルを構築.(iii) 実証: MD-LSUN-AE による河道変動の予測を実施,実験結果との比較評価を実施. 引き続き局所性やシフト変性,ユニタリ性などLSUNが有する性質について各種応用での評価を進める.また,LSUN の理論的な意味を明確にするために,微分幾何学的解析との関係性を探求する.加えて,LSUNのMATLAB/PyTorchおよびFPGAについても拡張実装を進める.さらに,学習設計の加速を試みる.設計パラメータが直交行列であることから,Landing 法などの高速な多様体学習手法の導入を試みる.設計パラメータの正則化や非局所化などの課題にも取り組む.LSUNの複素化や多重解像度表現を実現するためのLSUNの階層化にも取り組む.今後のLSUNの応用展開を見据え,深層ループ展開や自己教師あり学習の洗練化にも取り組む.応用展開における試みとして,MD-LSUN-AEによる河川や地盤の状態推定や変動予測の高性能化,効率化に取り組む. 河川模型を利用した予測や制御の実験も行う.実験のためのセンシング・ネットワーク・アクチュエーション環境を整え,予測や制御実験のための可視化アプリや制御ソフトを開発する. 広く研究成果を公表し,関係する分野の人脈の構築と最新情報を収集するために国内学会,国際会議へ積極的に参加するとともに,研究成果の学術論文投稿および掲載を目指す.
|