研究課題/領域番号 |
22H00537
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
川節 拓実 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 助教 (70868330)
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研究分担者 |
細田 耕 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (10252610)
堀井 隆斗 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 講師 (60809333)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 足底科学 / インソールセンサ / ヒト運動スキル / 聴覚フィードバック / 足底3軸力 / スポーツサイエンス / ウェアラブルセンサ |
研究実績の概要 |
本年度は,インソール形状で装着する靴を選ばず,差し込むだけで容易に足底3軸力の計測が可能となるインソールセンサの開発を進め,また足底3軸力に基づくスポーツスキルの計測および日常生活での足底3軸力の変化に着目した実験を進めた.従来開発されてきたインソールセンサの知見を元に,圧力進行線に沿って5つのコイル式3軸力センサを配置し,それらから得られる情報をBluetoohを用いて無線で他デバイスにリアルタイムに送信可能なインソールセンサを開発した.日常生活や激しい運動の下でセンサや周辺回路が破損しないかを試行錯誤することで,後述するスキーのような激しい運動かつ厳しい環境下においても計測が可能であることを確かめた. 試作したセンサを用いて,スポーツスキルの計測および聴覚フィードバックによる運動パフォーマンスの改善を目的として,スキー中の足底3軸力の推移を計測,またリアルタイムの測定値に基づき音をフィードバックする聴覚フィードバックシステムを構築した.実験では,プルークボーゲンとパラレルターンにおいて足底3軸力に現れる違いを可視化し,剪断力を足底することでこれらの運動の違いを表現できることを確かめた.また,この知見に基づき剪断力の方向をリアルタイムで聴覚フィードバックすることで,プルークボーゲンからパラレルターンへの誘導が可能なことを示唆する結果を得た. 日常生活において,足底3軸力からヒトの状態が推定できるかを確かめるため,筋疲労前後での通常歩行において生じる足底力を複数の被験者に対して測定した.その結果,同一の歩行を行った際にも,被験者によって得られる足底3軸力に大きな個人差があること,疲労後には足底3軸力分布のばらつきが個人によらず大きくなる傾向を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りインソールセンサの開発を進め,コイル式センサの特徴を活かして激しい運動下でも利用可能で,また装着先を選ばず普段の運動靴からスキーブーツまで,様々なシューズに装着して容易に測定力が計測可能なセンサを開発できた.また,リアルタイムで測定データを無線送信することで,足底3軸力に基づく聴覚フィードバックシステムを構築した.開発したセンサ,システムを用いて実際にスキー滑走中の足底3軸力を計測し,計測データより初心者的動作,中級者的動作において足底3軸力にどのような違いが見られるのかを確認した.またこの結果より,初心者的から中級者的動作への移行を促すために必要な,聴覚フィードバックにおけるセンサ値からの音生成実験を行い,フィードバックがスキル向上に有用であることを示唆する結果を得た.日常生活において複数被験者の足底3軸力も測定し,特に筋疲労前後での歩行において個人内変化,個人間変化が見られるかを確認した.
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針としては,インソールセンサの改良,被験者実験の大規模実施,足底3軸力のビッグデータ化とその解析が挙げられる. 本年度試作したインソールセンサをさらに薄型化し,バッテリーの取り付け方をより容易に装着可能にするなどハードウェア面での改善を進める.また,サンプリング周波数の高速化や,無線によるリアルタイムデータ送信の信頼性向上,左右のインソールセンサ間でのデータ同期など,技術的に積み残している課題に取り組む. これまでの実験では,試作したインソールセンサの評価も兼ねているためにいずれの実験でも被験者は研究室関係者の少数のみで実施していた.そのため,今後はスキーをはじめとしたスポーツ時,また日常生活における運動で生じる足底3軸力の大規模な計測,聴覚フィードバックによる運動スキル改善において大規模な被験者実験を行うための準備を進める.被験者数を増やすことにより,特に個人間でのスキル差や現れる足底3軸力の差異の理解に取り組み,聴覚フィードバックでは音生成において個人最適化の手法の検討を進める.これらの実験を通じて足底データのビッグデータを生成し,個人差を吸収した本質的なヒトの運動スキルの表現,解析手法の構築に取り組む.
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