研究課題
本年度においては、チェルノブイリ原発事故以降の長期間にわたる環境影響評価を継続することを目的とし、ヨーロッパ河川における放射性セシウムの流出状況に関する包括的な調査を実施した。本研究は、放射性物質の環境中での挙動を理解することにより、本研究目的の達成を目指す。今年度、本研究においては、以下の研究者および機関と協力を行った。1)イギリス・ウクライナ:Jim Smith, Portsmouth大学,2)ウクライナ:Genaddy, Laptevウクライナ水文気象研究所(UHMI).3)オーストリア Christian Katzlberger オーストリア水環境科学研究所. 4)ハンガリー Sandor Tergan (IAEA)イギリス、オーストリア、イタリアの各国河川でのサンプリングを通じて、河川水中の 溶存態及び懸濁態のセシウム濃度、各種イオン濃度、EC値などのデータを取得した。また、セシウム133の測定も行い、放射性物質の詳細な分析を実施した。加えて、サンプリング地点近傍のリターおよび表層土壌から137Csの濃度を測定し、アンモニウム、カリウムイオン濃度との関連性についても分析を行った。これにより、セシウムの環境中での挙動をより深く理解することができた。さらに,福島県内の浪江および川俣の試験流域において、源流域のCs-137濃度とK+、NH4+およびDOCとの相関を詳細に分析した。この結果を基に、Science of Total Environmentに研究論文を発表した。この論文では、源流域における放射性セシウムの挙動と有機物分解の関連性についての新たな知見を提供しており,本研究の方向性の1つを導き出すものとなった。本年度の研究により、ヨーロッパおよび日本の河川環境における放射性セシウムの広範なデータベースを構築することができた。これにより、本研究目的「福島の水はなぜきれいなのか」の達成に近づくことができた。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的である「福島の河川水がなぜきれいになったのか」を解明するための、海外サンプリングが順調に推移している。また,森林流域の水質形成機構がセシウムの濃度を規定している可能性については,国内の研究事例により,従来提示されてきた水質に加え、有機物分解について初めて定量的に評価することができたため。
今後,海外のサンプリングを継続するとともに,水質,同位体等の測定,また水循環モデリングを介して,福島の河川水がなぜきれいになったのかを明らかにする。その上でその成果を高インパクトファクター雑誌に投稿する。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 5件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (21件) (うち招待講演 1件)
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