研究課題
本研究は、地下水の硝酸性窒素汚染問題の根本解決に資する窒素動態モデルの創出を目指し、人口約100万人の飲用水源を全て地下水に依存する熊本地域の広域地下水流動系を対象に、地表と地下の水・物質の挙動をシームレスで計算できる水文シミュレーターを駆使することで目に見えない地下における窒素成分の三次元的な広がりを誰もが分かる形で可視化し、その時間的な推移をコンピューター上で再現するものである。初年度は、最新の地下水流動モデルに窒素負荷条件を結合し、今後扱う窒素動態モデルの基盤を構築した。モデルの構築には(株)地圏環境テクノロジー社が保有するGETFLOWSを使用し、同社技術者と熊本大学の細野ならびに研究室学生の谷口が連携し実施した。モデルの再現性をより高めるためグリッド数を従来の約100万から約300万にまで増強し、最近60年間(1960-2020年)の気象・水位観測データならびに農林業センサス、土地利用データが完備されるよう情報を更新し、これまでにない精度での新地下水流動モデルを反映させた窒素動態モデルの基盤を構築すると共に、今後モデルの精度を向上するためにクリアすべき課題の抽出に成功した。加えて、共同研究者の中川教授(長崎大学)と天野特任助教(東海大学)および熊本大学と長崎大学の大学院生参画の体制で熊本地域全域を対象に地下水試料の採水を実施した。各種成分・安定同位体分析を実施し得られた予察的な成果を学会にて発表した。
2: おおむね順調に進展している
四年間の全体計画を通して計画していた本年度(初年度)計画は問題なく実行でき、既にいくつかの成果について学会発表している。ポスドク研究員を雇用する計画があったが採用がやや遅れてしまったものの、全体の計画遂行には大きな支障はない。したがって、現在までの進捗状況としてはおおむね順調に進展しているといえる。
基本的には四年間の全体計画を通して計画していた次年度(2年目)計画案に沿って研究を遂行したいと考えている。すなわち、地下水流動モデルの再調整を行いつつ、農林業センサスデータならびに窒素削減データから得られる地表からの窒素負荷量に係る詳細な時空間情報を網羅的にモデルに組み込み、初年度抽出された課題について試行錯誤を通して検討する年にしたい。また、次年度以降もモデル構築と並行し成分・同位体分析用の地下水試料の採水・分析を、引き続き共同研究者の中川教授(長崎大学)と天野特任助教(東海大学)および熊本大学と長崎大学の大学院生が積極的に参画できる体制で、また、新たに雇用する若手のポスドク研究員の協力を得る形で更に推し進めたい。可能であれば、これら水質・同位体データおよび農林業センサスデータや行政による水質検査結果のアーカイブスデータを取りまとめ、地域の窒素動態の過去と現状について観測ベースで明らかにし、その成果を学術論文の形で発表したいと計画している。
すべて 2022 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件)
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