研究課題/領域番号 |
22H00579
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
富田 浩史 岩手大学, 理工学部, 教授 (40302088)
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研究分担者 |
田中 徹 東北大学, 医工学研究科, 教授 (40417382)
菅野 江里子 岩手大学, 理工学部, 准教授 (70375210)
田端 希多子 岩手大学, 理工学部, 特任准教授 (80714576)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 光遺伝学 / 網膜 / 視覚野 / 遺伝子治療 / 網膜色素変性症 / 人工視覚 |
研究実績の概要 |
失明者の視覚を再建する治療法として、オプトジェネティック遺伝子を用いた遺伝子治療が注目されている。この方法は、網膜細胞にオプトジェネティック遺伝子を導入し視覚を再建するものであるが、視神経が機能しない失明に対しては適応することができない。そこで、今回、視覚野に直接オプトジェネティック遺伝子を導入し、視覚野に直接映像を見せることによって視覚を回復させる、遺伝子治療と工学技術を組み合わせた視覚再建技術を開発することを目的とした。 視覚野に映像を照射することを考慮すると、広範囲に遺伝子導入を行う必要があり、また、細胞選択的なプロモーターおよびウイルスベクターの血清型を選択する必要がある。本年度は、細胞特異的AAVベクターを構築し、種々の血清型を用いて広範囲に遺伝子導入する手法を検討した。マイクロシリンジを用いてウイルス溶液を視覚野に注入する手法では予想通り注入個所に限局し広範囲に遺伝子を導入することができなかったのに対し、AAVベクターをゲル化し目的領域に塗布することにより導入効率は注射に比べて低いものの、広範囲に遺伝子を導入することに成功した。 導入効率が悪いものの広範囲に遺伝子導入できたため、来年度に予定していた行動学的評価による光応答を調べる目的で、シャトルアボイダンス(回避反応実験)に着手した。正常な視覚を持つラットで光応答を調べた結果、7日間のトレーニングで90%以上の回避率が得られ、光応答をシャトルアボイダンスで評価できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に記載したTgラットの樹立は未だ達成できていないものの、次年度に計画していた遺伝子導入のためのAAVベクターの構築ならびに遺伝子導入法に関して達成することができた。特に、広範囲に遺伝子を導入する技術は最も難しい課題と当初考えていたものの、AAVベクターの血清型の決定ならびにAAV溶液のゲル化によって、まだ、導入効率に関しては改善の余地があると考えられるが、広範囲に遺伝子を導入できたことは大きな成果であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に達成できなかった研究計画を引き続き実施するとともに、来年度に予定している行動学的評価を繰り上げて、本年度に実施する予定である。 具体的には、視覚野に遺伝子導入を行った後、眼球からの視覚情報を排除する目的で、視神経障害を惹起し、その後、行動学的評価によりラットの光応答性を評価する。
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