研究課題/領域番号 |
22H00588
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
関谷 毅 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (80372407)
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研究分担者 |
荒木 徹平 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (10749518)
植村 隆文 大阪大学, 産業科学研究所, 特任准教授(常勤) (30448097)
鶴田 修一 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (70876789)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | フレキシブルエレクトロニクス / バイオエレクトロニクス / 生体適合性材料 |
研究実績の概要 |
本研究開発では、関谷らの研究グループが世界に先駆けて実現してきた「生体適合性有機材料」と「ナノ導電材料」の融合から成る柔軟電子/光材料技術を用いて“生体密着・生体融合可能で、長期間にわたり光と電気により生体組織へ相互作用が可能な生体界面材料「Interactive oadhesive」”を実現する取り組みである。本材料の特徴は、生体組織上にて長期間安定的に密着性を保ちつつ、光や電気による神経刺激機能と微弱生体計測機能を有し、最後は体内に吸収される新規の生体界面材料を実現する。このような生体界面技術を実現することで、生体拒絶反応を抑え、長期間にわたり生体内に留置できる光・電子デバイスの応用が可能になるとともに、新しい生体埋め込み型医療機器や生体計測機器の開発に貢献する。生体組織特有の体液や個体差の影響を受けることのない生体界面材料を、ナノ材料学的、構造学的、生体組織学的視点から包括的に取り組む研究はその難しさから、これまで皆無であったが、ここでは生体適合性デバイスを長年研究して、複数の医療機器を実現してきた関谷らの実績をフルに活用する。
初年度の目標は、目指す生体界面材料の基本要素技術と定めた「Bio-Interactive層」、「Bio-Adhesive層」をそれぞれ開発し、これを融合することであったが、その取り組みを着実に進めることができた。実際に、電気的および光学的特性評価の結果、目標として定めた数値と比較しても、同等以上の高い導電性と高い光透過性を得るとともに、第三者機関による生体適合性試験を実施することができた。さらに、それを融合させたネットワーク薄膜構造の形成の取り組みにも着手することができた。一連の成果は、複数の学術論文誌に掲載されるとともに、世界最高峰の学術論文誌ScienceやAdvanced Materialsにも掲載される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度の目標であった「Bio-Interactive層」、「Bio-Adhesive層」の要素技術と、それを融合させたダブルネットワーク(DN)薄膜構造の形成に成功した。電気的および光学的特性評価の結果、高い導電性、光透過性を得るとともに、生体適合性試験を予定通り実施することができた。一連の成果は、多くの学術論文誌に掲載されているほか、世界最高峰の学術論文誌であるScienceやAdvanced Materials誌にも掲載される予定である。
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今後の研究の推進方策 |
一年目の成果を基に、二年目は、上記のInteractive Bio-Adhesiveを搭載した高機能ゲル電極の試作と評価へと取り掛かる。 具体的には、電気的特性、光特性、生体適合性を損なうことなく、生体へ密着可能な材料形状の最適化とその作製プロセス開発に主眼を置く。特に今年度内に実現させるのは、Interactive Bio-Adhesive技術によるゲル電極の作製とこれを用いた実際の生体計測である。手順としては、まず初めに、印刷技術を用いてInteractive Bio-Adhesiveを塗布することで、生体適合性、密着性、光と電気機能を同時に搭載した高機能柔軟性電極を完成させる。改めて、生体計測に必要とされる電気的特性、光特性、生体適合性を1年目と同様の手法により評価する。実験室レベルでの特性評価後は、このゲル電極を、生体電位計測器などの先端に搭載し、動物実験などにより生体内外から実際の生体情報を取得する。計測対象としては、生体電位の中で最も小さい信号である脳波(約1マイクロボルト程度)の計測を行い、ゲル電極の電気的特性、 特にノイズ耐性を検証する。また、光学的特性を生体内で検証できる実験系を組み上げ、光学特性についても評価を進める。生体適合性試験については、外部委託機関を活用するとともに、大阪大学脳外科の医師らと緊密に連携する。
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