研究課題/領域番号 |
22H00593
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
山吉 麻子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (70380532)
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研究分担者 |
徳田 崇 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (50314539)
駒野 淳 大阪医科薬科大学, 薬学部, 教授 (60356251)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ゲノム編集 / 核酸医薬 / 光操作 / 光架橋性核酸 / ウイルス感染症 |
研究実績の概要 |
1. Light-Scissorsの分子構造の最適化(山吉) 2022年度、我々の研究グループでは、人工核酸に光架橋性を付与できる化合物の開発に成功した。今年度(2023年度)はこの化合物を用い、次世代ゲノム編集ツールとして期待されているペプチド核酸に光架橋性を付与し、標的遺伝子との結合親和性や光架橋能を評価した。その結果、tail-clamp型PNA にソラレンを導入した核酸でのみ、中性条件下での標的遺伝子との結合と架橋が認められた。このため、ソラレン導入tail-clamp型PNA (Ps-tc-PNA)を細胞系等の実験に用いることとした。 2. Light-Scissors のゲノム編集効率の評価(モデル細胞系)(駒野、山吉) ゲノム編集効率を迅速評価するためのルシフェラーゼ発現プラスミドを構築した。このプラスミドは、通常時は Firefly Luciferase(FF Luc)活性のみ観察されるが、Ps-tc-PNAによるゲノム編集が起こると、FF Luc活性が減少し、 Renilla Luciferase(R Luc)活性が回復する。この評価系を用い、モデル配列を標的としたPs-tc-PNAによるゲノム編集効率を評価した結果、UV照射時のみ、FF Luc活性が減少し、R Luc活性が回復した。これらのデータより、Ps-tc-PNAを用いて生細胞中でのゲノム編集が達成されたことが示された。また、Ps-tc-PNA の配列の向きによって、誘起されるゲノム編集が異なることも示された。 3. in vivo展開を可能とする光照射装置の開発(徳田、山吉) 主要なリンパ系組織に照射可能なLED形状のUV光照射装置を開発し、体内埋入実験を行った。柔軟な平面型光刺激デバイスを組み合わせ、新しい体内埋入型光照射装置を開発した。現在、in vivo での埋入実験、照度の検証を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度、生細胞中でのゲノム編集を実現する新たな Light-Scissors を開発することに成功した。さらに、PNAの配列の方向性により、ゲノム編集効率を操作できる可能性も示された。今後、DNA修復機構と照らし合わせて考察することで、新たな遺伝子制御ツールの開発も見込まれる。 さらに、ゲノム編集の迅速評価系を用い、プロウイルス遺伝子を標的とした Light-Scissors の開発にも着手している。in vivo光照射デバイスも完成したことから、当初の計画以上に進展していると言うことができる。
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今後の研究の推進方策 |
1. Light-Scissorsの分子構造の最適化(山吉) 既に様々な化学構造を持つLight-Scissorsの開発に成功しており、あらゆる人工核酸に光架橋性を付与することを可能とする化合物の開発にも成功した(2023年 PCT出願済)。この化合物を用い、次世代ゲノム編集ツールとして期待されているペプチド核酸に光架橋性を付与し、標的遺伝子との結合親和性や光架橋能を網羅的に評価する。2023年度までの検討により、細胞内で光ゲノム編集を実現する人工核酸の開発にも成功しているため、分子設計のさらなる最適化をはかる。 2. Light-Scissors のゲノム編集効率の評価(モデル細胞系)(駒野、山吉) 2023年度までに、Light-Scissors を用いたゲノム編集効率を評価する実験系として、宿主細胞からのプロウィルスゲノムの除去効率を迅速評価できるルシフェラーゼレポータアッセイを構築することに成功し、前項目(1)で合成したLight-Scissorsのゲノム編集効率を評価してきた。昨年度まではモデル配列を用いた検討に注力してきたが、2024年度はHTLV-1プロウイルス遺伝子に対して結合する三重鎖形成核酸を新たに設計し、これにソラレンを導入したLight-Scissors を合成し、プロウイルスゲノム除去効率の評価、光照射によるその時空間的制御について検討する。 3. in vivo展開を可能とする光照射装置の開発(徳田、山吉) 2023年度までに、柔軟な平面型光刺激デバイスをのプロトタイプとして、ポリイミドフレキシブル基板およびLEDチップを組み合わせ、新しい体内埋入型光照射装置を開発してきた。その結果、より柔軟性を持たせたデバイスが in vivo埋入に良好であることが判明したため、基盤の在室や形状についてさらなる改良をはかる。
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備考 |
2024年5月1日付で東京工業大学へ異動いたしました。
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