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2023 年度 実績報告書

瞬時データ解析脳を有した常時健康管理センサパッチの開発

研究課題

研究課題/領域番号 22H00594
研究機関北海道大学

研究代表者

竹井 邦晴  北海道大学, 情報科学研究院, 教授 (20630833)

研究分担者 中嶋 浩平  東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授 (10740251)
渡辺 心  順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (80220888)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワードフレキシブルセンサ / 健康管理 / リザバーコンピューティング / エッジシステム
研究実績の概要

本研究では無線で常時バイタル計測し、そのデータの瞬時解析を行う健康管理センサシートシステムの開発を目指している。本年度は昨年度の実証試験などの遅れ分をまずは取り返し、さらに汗センサの開発そして実証試験によって得られたバイタルデータを用いて、機械学習の一つであるリザバーコンピューティングを用いて瞬時に解析するアルゴリズムの開発を行った。
まず汗センサにおいては、昨年度からの継続課題として取り組んだ。汗を安定且つ長時間計測する手法としてフィルム内に流路を形成し、さらに構造を点滴型にすることで長時間且つ多量の発汗量を計測する方法を提案した。従来の報告されているフレキシブル発汗センサでは構造上発汗量に制限があったが、本研究で提案した構造を用いることで理論上は無制限に発汗を計測できるようになり、その可能性を実験的に示した。そしてそのセンサに無線回路を搭載させ、簡易サウナ内で発汗量及び汗中のイオン濃度の常時・連続計測を行った。その結果、スポーツ飲料の摂取有無に応じて、汗中のイオン濃度に変化があることが確認できた。また発汗量も市販のセンサと同等の傾向を示し、実際のウェアラブルセンサ用途として応用展開できる可能性を示唆することができた。
次に、バイタルデータを解析することでリザバーコンピューティングのアルゴリズムの開発を行った。最初のターゲットとして、バイタルデータ及び活動量を解析することで咳、不整脈、転倒などをリアルタイムで瞬時に解析することを目指した。データのプリプロセッシングや拡張、そしてアルゴリズムの最適化及び工夫を施すことで、汎化性能(学習データ以外の誰が使っても同等の結果がでる)の高い、アルゴリズムを開発することができた。本アルゴリズムができたので、その結果を利用者にフィードバックするスマートフォンシステムの開発を開始することもできている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本年度は予定していた汗センサとして汗中のイオン濃度及び発汗量を常時・安定して計測でき、さらに印刷技術でその他のセンサと集積可能なプロセスの開発を行った。印刷手法としてスクリーン印刷などを適用することで、ラミネートプロセスが必要にはなるが計画通りセンサを開発することができた。また実際に実証試験を行うことで多量の発汗であっても長時間安定して電解質濃度や発汗量を計測できることを確認した。2022年度計測を終えた熱中症環境化のバイタルや睡眠時無呼吸患者のバイタルデータを用いて、そのデータ解析を実施した。そしてその解析結果を自動判別するリザバーコンピューティングのアルゴリズムを開発し、最初のターゲットである咳、不整脈、転倒などを瞬時に解析するシステムの開発に成功した。またそれを用いた利用者へのフィードバックシステムとして次年度予定していたスマートフォンで動作するアプリ開発にも取り掛かることができている。このような進捗状況であり、当初の計画以上に進展している。

今後の研究の推進方策

本年度、予定通りバイタルデータの解析及びそのリザバーコンピューティングでの瞬時解析に用いるアルゴリズムの開発を実施することができた。まだ第一段階であり、病気の診断などはできない状態であるが咳や不整脈、転倒などを遠隔で常時見守りできそうな状況である。またスマートフォン上で動作するアプリ開発にも取り組むことができている。次年度は、これらのアルゴリズムの更なる改良及びアプリを開発することで誰でも、どこでも、簡単に利用できる瞬時解析脳を有したフレキシブルセンサシステムを実証することを目指す。またこのシステム及びアルゴリズムを様々な応用分野に展開・発展させることでフレキシブルセンサシステムの応用分野におけるブレイクスルーを起こすことを目指す。このようなシステム開発や新たな分野の探索においてセンサの新たな仕様や新規計測用センサの開発が必要になることが考えられ、それらのセンサ改良や新規センサの開発を実施する。

  • 研究成果

    (38件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件) 学会発表 (32件) (うち国際学会 9件、 招待講演 9件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Nankai University(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      Nankai University
  • [雑誌論文] Neuromorphic antennal sensory system2024

    • 著者名/発表者名
      Jiang Chengpeng、Xu Honghuan、Yang Lu、Liu Jiaqi、Li Yue、Takei Kuniharu、Xu Wentao
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 15 ページ: 2109

    • DOI

      10.1038/s41467-024-46393-7

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Stretchable Electronic Skin using Laser‐Induced Graphene and Liquid Metal with an Action Recognition System Powered by Machine Learning2024

    • 著者名/発表者名
      Li Yanpeng、Matsumura Guren、Xuan Yan、Honda Satoko、Takei Kuniharu
    • 雑誌名

      Advanced Functional Materials

      巻: in press ページ: 2313824

    • DOI

      10.1002/adfm.202313824

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Highly Stable, Flexible ISFET pH Sensor Using Sorted Semiconducting SWNTs in Aqueous Solution2023

    • 著者名/発表者名
      Asai Mitsuo、Honda Satoko、Isshiki Nobuyuki、Takesue Masahumi、Hiraishi Atsushi、Yamada Mayu、Takei Kuniharu
    • 雑誌名

      Advanced Materials Technologies

      巻: 8 ページ: 2300842

    • DOI

      10.1002/admt.202300842

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Wireless, Flexible, Ionic, Perspiration‐Rate Sensor System with Long‐Time and High Sweat Volume Functions Toward Early‐Stage, Real‐Time Detection of Dehydration2023

    • 著者名/発表者名
      Honda Satoko、Tanaka Ryuki、Matsumura Guren、Seimiya Naruhito、Takei Kuniharu
    • 雑誌名

      Advanced Functional Materials

      巻: 33 ページ: 2306516

    • DOI

      10.1002/adfm.202306516

    • 査読あり
  • [学会発表] 皮膚のように柔らかい貼付型センサシート2024

    • 著者名/発表者名
      竹井邦晴
    • 学会等名
      第71回応用物理学会春季学術講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] A dual-sensor system for comprehensive direction and strain recognition2024

    • 著者名/発表者名
      Yue Qin , Yan Xuan, Kuniharu Takei
    • 学会等名
      第71回応用物理学会春季学術講演会
  • [学会発表] インソール型圧力センサを用いた歩行姿勢の判別2024

    • 著者名/発表者名
      近藤芳樹、本田智子、松村紅怜、竹井邦晴
    • 学会等名
      第71回応用物理学会春季学術講演会
  • [学会発表] 切り紙構造を有したフレキシブル歪みセンサ2024

    • 著者名/発表者名
      寺本匡希、竹井邦晴
    • 学会等名
      第71回応用物理学会春季学術講演会
  • [学会発表] リザバーコンピューティングを搭載したフレキシブル風雨量センサの開発2024

    • 著者名/発表者名
      清宮徳人、松村紅怜、中村悠希、中嶋浩平、竹井邦晴
    • 学会等名
      第71回応用物理学会春季学術講演会
  • [学会発表] Flexible pressure sensor with capability to detect positive and negative pressure2024

    • 著者名/発表者名
      Yan Xuan, Kuniharu Takei
    • 学会等名
      第71回応用物理学会春季学術講演会
  • [学会発表] 機械学習を搭載したマルチ検知ブラシ型センサシステムの開発2024

    • 著者名/発表者名
      中村悠希、本田智子、松村紅怜、中嶋浩平、竹井邦晴
    • 学会等名
      第71回応用物理学会春季学術講演会
  • [学会発表] Nanomaterial-based flexible sensor systems2023

    • 著者名/発表者名
      Kuniharu Takei
    • 学会等名
      The 23rd International Conference on the Science and Applications of Nanotubes and Low-Dimensional Materials (NT-23)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Wireless wearable and flexible healthcare sensor system2023

    • 著者名/発表者名
      Kuniharu Takei
    • 学会等名
      CBE 30th Anniversary Conference
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Stretchable tactile pressure sensor for e-skin2023

    • 著者名/発表者名
      Yanpeng Li, Yan Xuan, Kuniharu Takei
    • 学会等名
      The 40th International Conference of Photopolymer Science and Technology
    • 国際学会
  • [学会発表] A flexible, embroidered strain sensor for use with textiles2023

    • 著者名/発表者名
      Yoshiki Kondo, Satoko Honda, Kuniharu Takei
    • 学会等名
      The 22nd International Conference on Solid-State Sensors, Actuators and Microsystems (Transducers 2023)
    • 国際学会
  • [学会発表] Wireless healthcare flexible sensor system2023

    • 著者名/発表者名
      Kuniharu Takei
    • 学会等名
      244th ECS meeting
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Multimodal Wearable Sensor Sheets2023

    • 著者名/発表者名
      Kuniharu Takei
    • 学会等名
      2023 Materials Research Society-Taiwan International Conference (2023 MRSTIC)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Multi-detection brush-type e-whisker2023

    • 著者名/発表者名
      Haruki Nakamura, Guren Matsumura, Satoko Honda, Kuniharu Takei
    • 学会等名
      2023 MRS Fall Meeting & Exhibit
    • 国際学会
  • [学会発表] Flexible sensor edge system2023

    • 著者名/発表者名
      Kuniharu Takei
    • 学会等名
      The 24th RIES-HOKUDAI International Symposium
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Multimodal flexible sensor systems2023

    • 著者名/発表者名
      Kuniharu Takei
    • 学会等名
      The 30th International Display Workshops (IDW 23)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Flexible bending sensors using laser-induced graphene transferred onto PDMS2023

    • 著者名/発表者名
      Yan Xuan, Satoko Honda, Kuniharu Takei
    • 学会等名
      第5回フレキシブル・ストレッチャブルエレクトロニクス若手研究者の会
  • [学会発表] Flexible pressure sensor for detecting brush motion2023

    • 著者名/発表者名
      中村悠希、若林聖史、本田智子、竹井邦晴
    • 学会等名
      第5回フレキシブル・ストレッチャブルエレクトロニクス若手研究者の会
  • [学会発表] Application of laser-induced graphene in bending sensors2023

    • 著者名/発表者名
      Yan Xuan, Kuniharu Takei
    • 学会等名
      第一回「物質、デバイス、生命の融合」研究会
  • [学会発表] 無線型フレキシブル心電図センサの開発2023

    • 著者名/発表者名
      原飛雅、宣妍、竹井邦晴
    • 学会等名
      第一回「物質、デバイス、生命の融合」研究会
  • [学会発表] 柔軟かつ耐久性を持つフレキシブル圧力センサの開発2023

    • 著者名/発表者名
      李艶鵬、宣妍、竹井邦晴
    • 学会等名
      第一回「物質、デバイス、生命の融合」研究会
  • [学会発表] フレキシブルセンサによるブラシの動き検知2023

    • 著者名/発表者名
      中村悠希、竹井邦晴
    • 学会等名
      第一回「物質、デバイス、生命の融合」研究会
  • [学会発表] 予兆から見つける未病・異常の早期発見センサシートの開発2023

    • 著者名/発表者名
      竹井邦晴
    • 学会等名
      DXゼミナール in 札幌 Vol. 4
    • 招待講演
  • [学会発表] マルチモーダル・フレキシブルセンサシステム2023

    • 著者名/発表者名
      竹井邦晴
    • 学会等名
      映像情報メディア学会研究会
  • [学会発表] ブラシ型センサを用いたマルチ検知システムの開発2023

    • 著者名/発表者名
      中村悠希、本田智子、松村紅怜、中嶋浩平、竹井邦晴
    • 学会等名
      第84回応用物理月会秋季学術講演会
  • [学会発表] フレキシブル心電図センサと加速度センサによる転倒、活動、不整脈の検知システムの開発2023

    • 著者名/発表者名
      松村紅怜、本田智子、中嶋浩平、竹井邦晴
    • 学会等名
      第84回応用物理月会秋季学術講演会
  • [学会発表] 未病の早期発見に向けたウェアラブル・マルチモーダルセンサシート2023

    • 著者名/発表者名
      竹井邦晴
    • 学会等名
      JST-理研合同AIP公開シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] Stretchable pressure sensor2023

    • 著者名/発表者名
      Yanpeng Li, Yan Xuan, Satoko Honda, Kuniharu Takei
    • 学会等名
      第6回フレキシブル・ストレッチャブルエレクトロニクス若手研究者の会
  • [学会発表] Super hydrophobic and conductive flexible sensor for measuring water droplet dynamics2023

    • 著者名/発表者名
      Naruhito Seimiya, Haruki Nakamura, Guren Matsumura, Kuniharu Takei
    • 学会等名
      第6回フレキシブル・ストレッチャブルエレクトロニクス若手研究者の会
  • [学会発表] Multimodal flexible sensor sheet system with reservoir computing2023

    • 著者名/発表者名
      Guren Matsumura, Satoko Honda, Kohei Nakajima, Kuniharu Takei
    • 学会等名
      第6回フレキシブル・ストレッチャブルエレクトロニクス若手研究者の会
  • [学会発表] Multi-detection brush-type e-whisker2023

    • 著者名/発表者名
      Haruki Nakamura, Satoko Honda, Guren Matsumura, Kohei Nakajima, Kuniharu Takei
    • 学会等名
      第6回フレキシブル・ストレッチャブルエレクトロニクス若手研究者の会
  • [学会発表] どこにでも貼付可能なAdd-On型フレキシブル化学センサ2023

    • 著者名/発表者名
      竹井邦晴
    • 学会等名
      第22回シート技術研究発表会
  • [備考] 研究紹介HP

    • URL

      https://www.ist.hokudai.ac.jp/labo/nano/

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公開日: 2024-12-25  

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