研究課題
XRISMが2023年度に打ち上げ延期になったため、既存の観測データ等を用いて観測研究を行った。Tycho's SNRで行った非熱的放射や電子温度の年単位の時間変動については、査読論文としてまとめプレスリリースも行った。さらに、新しい観測データを入手しNASAゴダードの研究者と共同で研究を進めている。また、昨年度はSNRと星周物質の衝突に注目し、星周物質の軽元素組成から親星の質量を突き止める新手法を考案し、査読論文として出版した。これらの研究成果の発表を行ったほか、担当する学生がそれぞれ学会の優秀発表賞を受賞するなど多数の成果を上げている。さらに、銀河中心領域のサーヴェイ観測を継続し、大質量星の起源を示唆するマグネシウムの異常に豊富な超新星残骸を発見した他、初のジェット状超新星爆発の痕跡と考えられる超新星残骸を発見した。前者については電波望遠鏡による観測を遂行し、親星の質量推定を行う目処をつけた。後者については理論研究者とも議論を進め、銀河中心の国際学会でも発表を行った。これらの研究は、それぞれ次年度中に論文にまとめる予定である。
2: おおむね順調に進展している
既存のデータを用いた研究については順調に成果を上げているが、XRISMの打ち上げが延期になったことで、XRISMを使ったサイエンスの予定が遅れているため。
2023年度中にXRISMが打ち上がり、約1ヶ月の初期運用を経てPV(Performance Verification)フェーズが始まる。PVフェーズでは、事前にチ ーム内で提案した天体が順次観測されるので、2023年度中に最初の観測データが手に入るはずである。SNRと星周物質の衝突に着目し、電荷交換反応の検出などを行う。また、Tycho's SNRで行ったように、加熱直後のプラズマは電子温度の年単位の変動が期待される。ChandraやXMM-Newtonは20年以上の観測の蓄積があるため、公開アーカイブを探索して数年間の開きのある観測データを比較する。観測が2回以上行われていない場合は新たに観測提案を行う。前年度に発見したジェット状爆発の痕跡については、本年度に論文化を目指す。また、前年度に確立した、星周物質を利用した親星推定の方法を多くの天体に適用し、親星の爆発機構を明らかにしていく。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
The Astrophysical Journal
巻: 940 ページ: -
10.3847/1538-4357/ac94cf
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: - ページ: -
10.1093/pasj/psac062
10.1093/pasj/psac060
10.1093/pasj/psac033
10.3847/1538-4357/ac738f