本年度は、CRISPR/dCas13と脱メチル化酵素FTOおよびALKBH5とを融合させたタンパク質を用いたin vitroにおける標的選択的脱メチル化評価系の構築を行った。大腸菌発現系を用いたタンパク質発現精製条件の最適化、ガイドRNAのin vitro合成、およびN6-メチルアデノシンを含む標的RNAの合成、精製法を確立した。また、複合体を必要としないシンプルな配列選択的脱メチル化系として、RNA結合タンパク質PUFと脱メチル化酵素とを融合させたタンパク質をデザインし、大腸菌発現系より精製して、配列選択的な脱メチル化能を解析した。脱メチル化の評価は、N6-メチルアデノシン感受性のエンドリボヌクレアーゼMazFを用いた電気泳動による評価および、SELECT法を用いて行った。PUFタンパク質は、通常8つのリピートから構成されており、対応するRNA8塩基に結合するが、このリピート中に含まれるRNAを認識するアミノ酸にアラニン置換を導入して、7塩基認識型、および6塩基認識型へと改変したPUF改変体を作製した。これらの変異体は8塩基認識型とオーバーラップする塩基配列を認識しつつ、8塩基認識型と比較してRNAへの結合親和性が弱まった一方で、6塩基認識型とFTOとの融合体は、より低濃度で標的とするPUF結合配列の近傍に存在するN6-メチルアデノシンに対して高いRNA脱メチル化活性を示した。より詳細な検討が必要ではあるが、この結果は、RNAへの結合が弱まることで、脱メチル化酵素がRNAから解離しやすくなり、酵素反応のターンオーバーが高まっている可能性を示唆しているといえる。
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