多発性骨髄腫の予後や病態を反映する、新たな血清バイオマーカーの開発が望まれている。初発患者の骨髄腫細胞でのTAK1がリン酸化(活性化)していると治療抵抗性であり、生命予後が不良であることを見出し、TAK1依存的に骨髄腫細胞が特異的に分泌する蛋白をプロテオーム解析にて同定し、分泌量が多いものを64種選出した。このうちneogenin1 (NEO1)とplasma cell-induced resident ER protein (MZB1)に着目して、検討を進めた。患者52例の骨髄検体を用い、免疫染色で行ったところ、全ての患者の骨髄腫細胞にNEO1とMZB1が高発現していた。骨髄腫細胞株の培養上清中にもNEO1とMZB1の免疫活性を認めた。患者血清での評価ではNEO1とMZB1の免疫活性を認めたが、患者ごとの測定値の差が大きかった。現在、症例数を増やし、NEO1とMZB1の血中濃度と相関する分子生物学的因子の探索、また同一患者での治療経過での変化、治療反応性との相関の解析を行なっている。NEO1は、肝細胞でhemojuvelin (HJV)と相互作用してhepcidinの発現を誘導するため、骨髄腫細胞が多量に分泌するNEO1は、骨髄腫の貧血やhepcidin誘導を惹起する骨髄腫細胞由来因子であるかを検討している。また、骨芽細胞膜結合型NEO1はBMP2と結合し受容体として作用しているが、分泌型NEO1はBMP2の囮受容体として作用し、BMP2による骨形成を抑制していることが見出された。MZB1はIgAなどの免疫グロブリンのアセンブリーや小胞体ストレス惹起に関与するため、プロテアソーム阻害薬の感受性との相関を検討中である。また、骨髄腫細胞株を用いNEO1とMZB1遺伝子のノックアウト細胞を作成しているが、現時点では細胞の生存が落ちるため作成に難航している。
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