本研究では、日本人英語学習者の技能統合型ライティングを行っている際のライティングプロセスを思考発話法・キーロガー・アイトラッキングの3つの研究手法を混合して分析した。実験協力者は、リーディングの内容について要約を書く技能統合型ライティングタスクと自分の意見を元にエッセイを書く独立型ライティングタスクの両方を行った。 分析の結果、どちらのライティングタスクでも、学習者は主に語彙面に注意を向けてタスクを行っていることがわかった。また、独立型ライティングタスクでは、文法面に関連する処理が多く、技能統合型ライティングタスクでは、より難易度の高い語彙を使おうと、語彙を精緻にしようとするプロセスがより多く行われていた。 アイトラッキングの分析からは、学習者が語彙について考えている時には、技能統合型ライティングタスクでは、リーディングの本文を見ることが多く、文法事項について考える時には、自分がすでに持っている文法知識を使うため、本文を見ることが少ない傾向であることがわかった。 さらに、文章の質を分析した結果、技能統合型ライティングタスクの方が、語彙の多様性の値が高く、キーロガーによる分析で明らかになった、ポーズ(一定時間のライティングの停止)の頻度が多かったことがわかった。 本研究の結果より、技能統合型ライティングタスクは特に語彙について学習者に深く考えさせることができるタスクであることが明らかになった。また、語彙について考えている時にはインプットのリーディングにある言語情報を注視し、そのインプット情報を活用しようとしていることがわかった。 少人数の実験ではあったが、混合研究法を用いることで、1つの手法では明らかになりにくい事象について分析することができた。今後、より多くの技能統合型ライティングタスクに関する研究や指導実践が行われることが期待される。
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