てんかん患者のQOLには、てんかん発作だけではなく精神症状や社会参加などが大きな影響を与えるため、てんかん診療における心理社会的支援の必要性が広く知られるようになった。 本研究では、まずてんかん患者の疾患認知を客観的に把握することや、心理的介入の効果判定ツールを開発することを目指して、てんかん患者の疾患認知を測定する「Epilepsy Stigma Scale」の日本語版を作成した。338名のてんかん患者を対象として分析を行った結果、「日本語版てんかんスティグマ尺度」は原版とは異なる2因子10項目の尺度であることが明らかとなった。さらに、この尺度の内的一貫性と構成概念妥当性も確認することができた。「日本語版てんかんスティグマ尺度」の作成は、これまで本邦にはてんかん患者の疾患認知を測定する信頼性と妥当性が担保された尺度が非常に少なかったという課題を克服し、心理的支援における科学的エビデンスの構築を促進するという点においても意義があると考えている。次に、就職を目指しているてんかん患者を対象として「てんかんの病名開示に関する検討ガイド」に基づいた心理的介入を行った。この介入は、患者のセルフスティグマの軽減だけでなく、主体的な治療態度の向上と、計画性のある就職活動の開始につながる可能性があることが示唆された。 本研究により、てんかん患者の心理社会的支援の確立を促進する重要な知見を得ることができた。特に、疾患認知の測定ツールの開発と疾患認知を考慮した心理社会的支援の提供を試みた点で意義が大きいと考えている。
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