本研究は、養育者の養育スキルの向上や子どもの破壊的行動の減少に効果的であり、本邦でも実施されている親子相互交流療法(Parent-Child Interaction Therapy; PCIT)の治療中断に関する要因を検討するために実施された。国内外の文献からPCITと中断率・中断要因についてのシステマティックレビューを実施し、これまでに報告された治療中断率と中断要因を抽出した。そこから、親の学歴・母親の抑うつの程度などの養育者関連の要因や、親子を取り巻く心理社会的要因による影響が示唆された。 システマティックレビューに基づき、母親の不安や抑うつなどの心理評価(STAI・BDI・POMS)や母親の発達特性評価(CAARS・AQ)、子どもの発達特性評価(Conners3・SRS-2)と行動上の障害の程度評価(CBCL・ECBI)、また、ボンディングなどの親子関係評価(ACE・PBI)をPCIT導入前に加え、セッション経過中にも実施し、治療完遂例と治療脱落例における心理社会的要因や発達特性を含む背景や治療プロセスを比較し、脱落パターンを解明するための前方視的研究を実施している。本研究課題を通して、2022年度より申請者らが組み入れを開始しており、愛育クリニックに加え、国立精神・神経医療研究センターでのデータ取得の体制の構築が達成された。前方視的な追跡を実施し、さらにそのケース数を蓄積している。 今後、愛育クリニックならびに国立精神・神経医療研究センターでデータ取得を継続し、本邦において初期脱落、治療後期脱落の要因を明らかにし、治療の適応と開始基準、継続基準に関するプロトコールを作成する。さらに、プロトコールをもとに、プロトコール導入以前と比べ中断率を減少させるかを、中断率、質問紙得点的効果から検証するパイロット研究を実施する。
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