○研究目的:本研究は、中学校理科の「気象とその変化」において、生徒の実感を重視した気象観測の方法や教材を開発し、生徒の日常を起点とした探究的な学びを提案することを目的としている。 ○研究方法:本研究では、主に「身近な大気を立体的に捉えるための観測法と教材」及び「降水量を実感・体感するための教材」を開発した。また、事前に生徒の実態調査を行なうことで、課題や教材の必要性等を明らかにし、授業で試行的に活用することでその効果を検証した。研究成果は、各種学会や研究会等で広く公表し、映像教材等は学校現場で活用できるように説明・配布した。 ○研究結果:事前調査では、多くの生徒が普段気圧が働いていることを実感できていないことや、太陽光が直接空気を暖めていると考える生徒がいること、時間雨量の数値から雨の強さを具体的に想像できない生徒がいることが明らかとなった。そこで、以下の教材開発や実践を行った。 「身近な大気を立体的に捉えるための観測法と教材」では、代表生徒がデータロガーを持ち帰り、通学路の気圧変化の観測を行った。その結果、生徒は日々の通学で受けている気圧変化を実感し、地形断面図と比較することによって高度と気圧変化を関連付けることができた。さらに、無人航空機を用いて気温の鉛直分布を観測し、霧が発生した早朝と日中の気温の鉛直分布を比較できる教材を作成した。本教材は、気温の鉛直分布を認識させるだけでなく、太陽光が直接空気をあたためるといった誤概念の改善にも寄与すると考える。 「降水量を実感・体感するための教材」では、実際に雨が降る様子(異なる時間雨量で数本)を撮影した映像教材の作成と、教室で任意の時間雨量を再現できる簡易降水量体験装置を試作した。これらの映像観察と降水体験から、降水量に関する具体的イメージを持たせられると考える。今後は、授業実践と改良を重ね、精緻化していきたい。
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