●本研究の目的 種々の学力調査等の結果から、日本の子ども達は、自分の考えを根拠に基づいて他者に説明することを苦手とする傾向が報告されている。研究代表者は、論理的に考え、表現する力を高めるための指導や、くずし字・古典籍の現物などを活用した、古典指導において、実践的研究を行ってきた。これらの研究を継続し、適切な教材の開発や授業実践の蓄積を重ねていくことが本研究の目的であった。 ●研究実施計画に基づく成果 藤村宣之氏(東京大学教授・本研究の研究指導者)の指導助言のもと、国語科の授業や総合的な学習の時間において協同的探究学習を実施し、勤務校主催の「2022年度 WWL2年次研究協議会 「新たな価値を生み出す思考力を育む―「課題研究STEAM」を支え、教科の学びをつなぐ「協同的探究学習」―」において、公開授業という形で成果報告を行い、参加者約20名と、探究型学習についての議論を深めた。また、同志社大学古典教材研究センター(研究代表者も研究員である)や日本近世文学会とも連携し、古典教材の開発・実践、その成果の検証を行った。加藤弓枝氏(名古屋市立大学准教授・本研究の研究指導者)、三宅宏幸氏(愛知県立大学准教授(当時)・本研究の研究指導者)と協同で、2023年3月に、勤務校で特別授業を実施した。さらに、これまでの成果をまとめ、『未来を切り拓く古典教材 和本・くずし字でこんな授業ができる』(文学通信、2023年)として刊行した(成果の普及や学校のICT化に対応するため、オープンアクセスとした)。同センター第3回研究集会(2023年3月)には、オンラインで100名強、対面で60名ほどが参加し、大学教員・小中高教員・学芸員・院生や学生などが活発に意見交換を行い、和本・くずし字を活用した古典教育の有効性についての知見を共有することができた。
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