研究目的:特別支援学校では、児童生徒の障害の重度・重複化、多様化により咀嚼・嚥下、食具の操作、姿勢保持等に課題を有している。その中でも認知や粗大・微細運動の遅れから摂食機能や食具の操作技能を自ら獲得し発達していくことは困難である。摂食機能は、様々な機能が関連し総合的に発達するため、教師が教育現場で実態把握、目標設定、効果的な学習活動を展開することは非常に難しい。本研究では、児童生徒の摂食機能と食事行動から摂食指導プログラム作成を目的とした。 研究方法: 本研究は、(1)実態把握と情報共有のための食事支援シート作成、活用、検討、(2)摂食動作の細分化による学習課題の明確化とそれに対する段階的な支援方法の設定と評価、(3)教師や保護者に対する児童生徒の困難さへの理解促進、給食や家庭で実践可能な指導の選択実施、(4)児童が持ちやすく操作しやすいスプーンの作成、試用で行われた。 研究成果:事前アセスメントについては、食事支援シートの活用により、発達段階の理解と実態把握の観点が明確になり、食事に必要な機能と技能、姿勢等を分けて評価する視点が持て、実態を整理して記録することができるようになった。目標設定と評価については、手指の巧緻性向上のための課題学習と摂食機能[捕食][咀嚼]に分け、さらに摂食動作を細分化し段階的に学習したことにより、食べ物をスプーンですくい口に運び口唇で取り込む、噛む動作の獲得、舌で食べ物を移動させ歯の上に乗せる動きが出る等の効果が見られた。情報共有と家庭との連携については、食材の硬さ、大きさ、補助の仕方等一人一人に適した支援法を共有することで、家庭での児童に対する理解が得られ、発達段階に即した食事と学習が可能となった。学習用スプーンの試作については、3Dプリンターで持ち方や操作性の向上を目指したスプーンを作成し、障害のある児童生徒の負担を軽減できるようになった。
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