重症心身障害児者の運動機能障害は、日常の活動の遂行を困難にするだけでなく、特定の姿勢や肢位が習慣化し、関節可動域の制限や変形を助長する。寝たきりの姿勢でいることが多く、楽しむことができる活動が限定されてしまいやすい。そのような問題を解決するため、脳性麻痺児者の身体機能改善や活動の楽しみを提供することができる揺動ベッドが開発された。揺動ベッドは、現在、全国の医療機関や福祉施設、保育園などで使用されている。揺動ベッドの効果は、先行研究で示されているものの、サンプル数が少ないことや身体機能の評価について十分になされていなかった。また、コントロール群と実験群との比較もなされていなかった。よって、本研究の目的を、揺動ベッドの揺動刺激が重症心身障害児者の自律神経や情動、体圧分散、筋緊張にどのような影響を与えるのかについて調査することとした。対象は、自分で座ったり動いたりすることが難しい寝たきりの児童生徒10名とした。評価は、コントロール条件(揺動刺激を与えない)と揺動刺激条件(5分間の揺動刺激を与える)における心拍変動、体圧分散、大腿直筋の硬さ、股関節外転受動可動域をそれぞれ測定器で測定した。また、情動反応について、担任に2つの条件における児童生徒の顔の表情を見てもらい、観察用質問紙(「楽しみ」、「不安」など8つの感情の項目)にそれぞれ10段階で回答してもらった。その結果、心拍変動と情動反応において有意に効果の差が現れ、揺動刺激を与えた方が重症心身障害児者はリラックスしたことが確認された。しかし、体圧分散と大腿直筋の硬さと股関節外転受動可動域について有意な差は確認できなかった。本研究結果から、揺動ベッドの揺動刺激が重度・重複障害児者のリラクセーションの促進につながることが証明された。
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