【目的】通級指導担当教員が通常の学級において、通級指導での学習体験を取り入れた障害理解教育を実施することで、通級指導に対する理解や障害理解に関する通常の学級児童の意識にどのような変容をもたらすのかについて、その効果を明らかにすることを目的とする。 【方法①】日本で初めての障害理解に関する専門書である「障害理解-心のバリアフリーの理論と実践-」 (徳田・水野,2005)を基に、現在の小中学校における障害理解教育に関する文献調査を行う。 【方法②】奈良県内の公立小学校において(通級による児童が在籍する5年生の児童51名が対象)、通級指導教室の体験学習を含む障害理解教育を実施し、テキストマイニングツールを活用してその効果を分析する。 【成果①】障害理解教育に関する研究や実践が進められている一方、現存する課題があることが明らかになった。今後の検討課題として、①障害理解に関する国レベルの共通理解を図り教育課程に位置づける②障害に関する科学的な認識を深める授業とともに障害理解を含む人間理解教育を教育活動全体で推進する二重構造で展開する③できる疑似体験に加え事前事後指導を取り入れる④適切な行動や具体的な援助について考えさせる⑤障害や障害者に対するポジティブな感情を育む⑥思いやり教育ではなく対等な関係を育む⑦児童生徒の実態を踏まえた個別具体的なプログラムを開発する⑧教員における障害理解に関する研修を充実させる⑨障害に関する社会的な認知を推進する⑩実施する教員側の困難や課題を併せて検討することが必要であることを明らかにした。 【成果②】通級指導教室の体験学習を含む障害理解教育を実施したことで、周囲児童が通級指導や通級指導を受ける児童への理解を深めたり、障害についての児童の捉え方に変化が見られたりしことから、通級指導担当教員が実施する障害理解教育が児童の障害理解の推進に寄与する可能性が示唆された。
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