機械加工の高度化を背景に,従来の直交3軸工作機械(以後,3軸機)から,タービンブレードのような複雑形状も加工できる同時5軸工作機械(以後,同時5軸機)への移行が加速している.社会ニーズとして付加価値の高い加工技術を有する技術者の育成が求められている.3軸機を用いたNC(数値制御)加工では,ほぼ自動的に工具経路を作成できる.一方で同時5軸機のNC加工では,工具経路作成が非常に困難である.その点を補うための分かりやすい教材が必要である.そこで本申請は,“技術習得型”から“思考・検証型”へ転換を図る教材の開発を目的とする.実験的要素を加えるため工作法,生産工学,材料力学,熱力学の知識を十分に活用しながら加工を行う.それにより3軸加工を行うオペレータ教育から同時5軸機を駆使するエンジニア教育への質の転換を図れるよう新たに教材を開発するものである. 具体的にはCADソフトウエアを用い,切削条件を考察する課題を与える.CADにより求めた毎分加工体積を同一とした場合の切込み深さと送り速度の関係を理解する内容とする.切削抵抗の大小による工具のたわみ,発熱量の大小による工具寿命に対する理解が深まる教材である.熱力学の観点から,刃先の温度分布や切削条件の違いによる切りくずの色調を理解する内容とする. また,ポータブル粗さ測定機を導入し,同時5軸加工後の表面粗さを測定する.切削条件の違いによる加工時間と粗さの違いが体験的にわかる実習内容とする.作成した教材を令和4年度4学年CADCAM科目において3週(12/9,12/13,2/7)で試行した.教育の効果を評価するためにアンケート調査を行い,施行前と施行後で比較した.評価の平均において施行前3.3であり,施行後3.5であったため,一定の効果があったことが確認できた. 他高専の参考となるよう道内4高専連携による技術職員SD発表会で取り組み内容を講演した.
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