2022 年度より高等学校「理数科」が新設されたが、その教材は、ほとんどなく、一方、生徒は、ルーテイン通りの実験を行い、データを処理し、グラフまでは作成するが、それらをもとにした考察を軽視する傾向にある。これは、データに基づいた考察や科学的な議論を行った経験がないことが大きな要因となっている。そのため、データ処理や考察の重要性を認識させる教材の開発が必要不可欠である。データ処理を行うことで生じた新たな疑問に対して、仮説を設定し、検証実験を行える教材の開発を行った。 カタラーゼ(酵素)による過酸化水素の分解速度(2H2O2 → 2H2O + O2↑)を求める実験を基軸に開発を行った。具体的には、溶液全体の質量の変化を測定し、酸素の発生速度から過酸化水素分解速度を求める。最終的に「カタラーゼ濃度と分解速度」の関係を表すグラフを作成し、考察することで新たに生じた疑問を探究する内容である。 はじめに安定したデータを得るための実験系の開発を試みた。カタラーゼ(酵素)は、ニワトリのササミをミキサーですりつぶしたものを用いるが、反応液の粘性と気泡の発生により、一定に酸素が拡散せず、測定値は、安定せず変動幅が大きい。 そこで、1)購入したカタラーゼを用いて、基準となる反応速度の測定を行った。2)気泡削除と粘性の低下との方法を試みた。気泡の削除は、プロペラによる撹拌、超音波照射、消泡材の添加を試みたが、いずれも効果は見られなかった。さらに、粘性の低下については、硫安による塩析法を試みたが、回収率が悪く生徒実験での使用は困難と判断した。 そのため、データの「ばらつき」をどのように処理するかも含む実験教材の作成を行うことにした。データ処理を行うことで生じた新たな疑問に対して、仮説を設定し、検証実験を行える教材を開発した。
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