中高で学ぶ物理の特に力学分野においては、物体の運動を表す速度や加速度、力のベクトルが多用される。しかし、これらは見ることができないため、初学者である生徒が理解する上で大きなハードルとなってきた。そこで、仮想現実技術(AR:Argumented Reality)とスマートフォンやタブレットのセンサーを活用することで、ベクトルを空間に可視化できないかと考えた。 その結果、速度、加速度、力のベクトル等を空間に可視化する新しいアプリ「MotionsAR」を開発することができた。これにより、生徒は手持ちのスマートフォンでアプリを起動するだけで、手軽かつ自由に三次元運動を解析し、運動の特徴を直感的に理解することが容易になった。 開発したアプリ教材の特徴は以下に要約される。 ①スマートフォンやタブレットを動かしたときの速度や加速度、働く力のベクトルに加えて、運動の軌跡をリアルタイムに空間に可視化することができる。空間に可視化しているため、様々な方向から観察することができ、生徒の直感的な理解につながる。②三次元運動を自由に解析できるため、汎用性が高い。③取得した様々な物理量の時間変化をグラフ化し、定量的に表示することで、現象と量的関係を紐づけて理解することができる。④取得した様々な物理量のデータシートをテキストファイルで出力することができ、さらに詳しい解析を可能とする。⑤アプリの使用方法はボタンをタップするだけである。中高生でも簡単に使うことができる。 開発したアプリ教材は「MotionsAR」という名称でiPhone、iPad専用アプリとして無料公開しており、すでに様々な中高の物理授業および課題研究等で活用されている。
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